コロムビアミュージックエンタテインメント取締役名誉相談役・廣瀬禎彦(Part4)--美空ひばりさんは今でも年間2億円の売り上げ、利益をもたらしてくれます
--音楽ビジネスは、新譜だけでなく、美空ひばりさんなどのストックビジネスの側面もありますね。
音楽ビジネスは、ストックビジネスでなければいけないと思っています。フロービジネスは、当たり外れがあります。PLのベースは自分のところのアセットである楽曲ストックで成り立つようにし、新譜はプラスになるようなモデルでないといけません。海外のメジャーでいうとユニバーサルやワーナーがよい例ですが、日本のレコード会社はどこもできていません。
--利益の面で、ストックと新譜の割合をどうお考えですか。
望みたいのは8対2です。ストックの利益率は7割以上あるんですよ。売り上げのうえでストック6割、新譜4割にすると利益はストックから出るのが8割、新譜が2割以下なんです。ストックから売り上げが6割以上出てくれば、利益の安定度が高くなるというわけです。
利益の累計トップは美空ひばりさんですが、コロムビアは十数万曲ものストックを持っています。日本における楽曲シェアの半数以上あるんですよ。
--美空ひばりさんは、いままでどれくらいの利益をコロムビアにもたらしているのですか。
ひばりさんは89年に亡くなっていますが、90年3月期はまだひばり効果があって黒字でした。91年以降は、私が来るまでずっと赤字。ひばりさんが亡くなっても、ひばりさんに寄りかかっていた時代のままきてしまったことが赤字の原因だったんでしょうね。
とはいえ、ひばりさんの歌は、いまでも年間2億円売れています。ひばりさんを参考にして言うと、いい歌手の条件は、彼女のように低音がきっちり響き、ゆとりのある間の取り方をする人です。必ず売れますよ。ひばりさんの曲がいまだに売れていることからわかるのは、音楽ビジネスの競争相手がいまの作り手ではなく、過去すべての楽曲だということです。これは音楽業界に限りません。あらゆるコンテンツビジネスが、過去のコンテンツとの戦いだといえます。
(写真:鈴木紳平)
1969年慶應義塾大学工学部を卒業、日本アイ・ビー・エムに入社。凄腕営業マンとして数々の受注を獲得し、宣伝部長、事業部長を歴任し、アスキー常務取締役に転身。同社専務から、さらにセガ代表取締役副社長、アットホーム代表取締役社長に就任しネット業界を牽引。2004年1月には、コロムビアミュージックエンタテインメント代表執行役兼最高経営責任者(CEO)に就任。09年5月に同社取締役名誉相談役に就任。
■CEOへの道は、エグゼクティブ向けの人材会社・リクルートエグゼクティブエージェント主催のセミナー「Road to CEO」との連動企画です。
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