ブラック・スワン上・下 不確実性とリスクの本質 ナシーム・ニコラス・タレブ著/望月衛訳~黒い白鳥が1羽でもいれば白鳥は白いとは言えない

ブラック・スワン上・下 不確実性とリスクの本質 ナシーム・ニコラス・タレブ著/望月衛訳~黒い白鳥が1羽でもいれば白鳥は白いとは言えない

評者 原田 泰 大和総研常務理事チーフエコノミスト

 白鳥は白い。しかし、黒い白鳥(ブラックスワン)が1羽でもいれば、白鳥は白いとは言えなくなる。今まではそうであっても、将来もそうだとは言えない。

黒い白鳥はまれな存在だが、まれにしかないことが重大な問題を引き起こすことがある。まれな程度が規則的に減少するとして不確実性をとらえると、急なジャンプの可能性とその影響を無視してしまう。そういうやり方をすると、草ばかり見て木を見過ごすことになる。

予測できない大きな乖離はめったに起こらないが、それは大きな影響を及ぼすので、無視するわけにはいかないというのが、本書で繰り返される主張である。

世界には月並みの国と果ての国がある。月並みの国では分布が極端になることはない。身長、体重、小さなレストランや歯科矯正医の所得、計測値でのIQなどだ。それに対して、果ての国では、極端だ。財産、著者1人当たりの引用回数、セレブとしての名前の認知度、株式の保有額、金融市場などは極端な分布を持つという。

ランダム性には2種類あって、第1の種類では極端な結果は起こらないし、大きな問題にもならないが、第2の種類では深刻になる。第1の物語では黒い白鳥は出てこないが、第2では出てくる。最大値が平均からそれほど離れないという合理的な理由がある変数なら、月並みの国の分布を当てはめてもよいが、そうでないならやめておくべきだという。

金融市場での変数の動きは第2のランダム性に左右されている。にもかかわらず、第1のランダム性に当てはめて不確実性を管理しようとすれば、とんでもない結果になるに決まっていると主張する。

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