揺れる金融機関、国際会計基準の変更のインパクト
だが、IASBが打ち出した草案では、保有目的による分類を廃止。債券の場合、「公正価値による評価」もしくは「償却原価による評価」のいずれかを選択し、公正価値なら評価差額がすべて損益に計上される。従来の満期保有は償却原価、売買目的は公正価値で評価されることは、後述する公開草案の2要件から明らかだが、あいまいなのは「その他有価証券」。この評価方法次第で、国債価格の変動が金融機関の収益に大きな影響を及ぼす。
この方針が明らかになった3月以降、「その他有価証券」はすべて公正価値評価を迫られるとの見方が有力になり、日本を揺さぶった。その場合、債券価格が2%動いただけで、三菱東京UFJ銀行では損益が5000億円振れることになる。それではとても国債は保有できない--。
財務省もこの動きに神経をとがらせ、6月のG8財務大臣会合では与謝野馨財務相が「金融商品の会計基準の見直しに当たり、国債の保有が不利とならないよう留意する必要がある」と主張していた。
そして今回の草案のポイントは、償却原価を選択できる二つの要件だ。第一が「基本的な貸付金の特徴を有すること」、第二は「契約金利に基づいて管理されていること」。
第一のいわば商品の条件は、キャッシュフローが元本と金利からのみ構成され、元本が確定していることと考えられ、発行が少ない物価連動債を除き、国債は該当する。物価連動債も「現在発行を停止しているが再開時には元本保証を検討している」(財務省理財局・中島淳一国債業務課長)。グレーなのが第二要件の保有の仕方だ。「金利と相場は裏腹なので、現行の『その他有価証券』での国債の管理手法が金利に基づく管理と認められるのか」(大手メガバンク財務・経理担当者)との疑念が払拭し切れなかった。メガバンクや大手生保が個別にIASBに何度か打診した結果、ほぼ償却原価が認められそうだという。