揺れる金融機関、国際会計基準の変更のインパクト
この方向だと、銀行にとってはむしろ従来よりも国債が保有しやすくなる可能性が高まる。時価情報の別記での開示は必要だが、従来あった満期保有に違反して一部売却した場合の罰則(すべての債券が満期保有扱いできなくなる)はなくなる。評価差額金の資本直入もなくなり、貸借対照表に振れが出ないからだ。
さらに、金融商品会計の第2弾として10月には「減損会計」の公開草案が予定されているが、公正価値評価の場合、評価差額がすべて損益に計上されるので減損はなくなり、償却原価の場合、「公正価値評価による減損ではなく、貸倒引当金と同様の扱いをする方向性が打ち出されている。基本的には流動性リスクは見ず、信用リスクを見ると解釈できる」(金融庁関係者)。
だとすれば、信用リスクのない国債の場合、減損がなくなる。昨年、変動利付国債がリーマンショック後の流動性危機で値付かずとなり、価格が急落したが、こうした事態があっても減損は回避できる。現行の「保有区分にかかわらず時価が著しく下がったら強制評価減」といったルールについてはIASBのメンバーは「あいまいで恣意的になる」と嫌がっているという。
一方、生保の関係者は手放しで喜べない。負債側の保険の時価評価という大きな問題が浮上しているからだ。
銀行の調達手段である預金は償却原価が適用されるが、保険は多くのオプションが絡む複雑な商品で、公正価値での評価を導入すれば、金利、死亡率(事故率)、事業費率、解約率などの変動で大幅に動く。つまり、資産側の国債だけを償却原価で固定する意味がない。資産側には株も不動産もあり、保有期間もまちまち。負債・資産ともに時価評価にしたところで、さまざまな環境変化で、両サイドがアンマッチな状態で大幅に動くことになるからだ。