スバル「WRX」は、雪道でもこんなにスゴい 4タイプの4輪駆動もトコトン乗り比べた

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WRX STiはもちろん、AWDだけではなく、すべてにおいてスポーティネスを追求している。フロントに搭載されたツインスクロールターボ付き2L水平対向エンジンと6速MTの組み合わせが秀逸で、中低速行きでダラダラと走っているところから急に加速したくなっても、アクセルを踏み込んだとたんに、もりもりとパワーが湧いてくるのを感じられる。3つの走行モードの中から最もスポーティな「S#」を選ぶと、気分は世界ラリー選手権3連覇を果たした1990年代にタイム・トリップしそうだ。

AWDの違い

特に、「WRX S4」と「レヴォーグ 2.0 GT-S アイサイト」に、同じVTC-AWDが搭載されているのも見逃せない。片や、スバルを代表する「WRX」に名を冠し、日本はもとより、アメリカにもコアなファンがいる。スバルのブランドイメージを背負う「WRX」の名を持つクルマで、走りを犠牲にすることは許されない。

此方、国内向けに開発したレヴォーグの上級モデルであり、落ち着いた乗り味が求められる。しかしながら、「安定した姿勢を保てて、コントロールのしやすい」という基本が守られていれば、ドライバーが望めばスポーティにも走らせられるし、大人っぽくも走れるのだ。要は、このAWDシステムでは「意のままにコントロールできる」ことが重要なのだ。

通常は前:後=45:55の割合でトルクがかけられているので、前輪にかかる負担が小さい。スバルの資料を見ると、「スロットル開度、エンジン回転、車速、前後輪回転比などをセンシングして、電子制御LSDの作動を制限することで、トルク配分を最適化」と、これまた難しいことが書いてあるのだけれど、ターボ付きのハイパワーエンジンでも、素直にハンドルが切れて、曲がりやすいクルマになるということだ。今回、そんなふうにADWの違いを感じられたのも面白かった。

一通り、AWDの特徴を掴んだあとに、公道に乗り出してみると、雪が積もった林道でも、まるで自分の庭のようにスムーズに走ることができる。そして、もし私が雪国に住んでいて、日々の暮らしを考えてクルマを選ぶなら、「レヴォーグ 2.0GT-S アイサイト」だろうなあ、と思う。VTD-AWDによる雪上での走破性の高さに加えて、一般道での乗り味の安定感が高く、日常の使い勝手の良さもあわせてバランスが取れている。スバルという自動車メーカーの質実剛健さを、そのままクルマの形にしたようだ。

そして折角、ここまで長々とAWDの魅力を語っておきながら余計なことを言うようだが、実はスバルのクルマが雪上での走破性が高く、かつ走って楽しい理由はAWDのデキがいいからだけではないからだ。

スバルの真骨頂である水平対向エンジンは、クルマ全体の重心を低めることができるため、走りにおいて有利な設計ができる。左右対象に設計されたAWD機構も、安定した走りができる要因だ。その上で、雪上のようにミューの低い路面では、悪路にハマってしまったときでも脱出するために4輪が使えるし、ABSもぐぐっと深く使える。

若い頃、日々の暮らしの実感として抱いていたスバル車への絶大な信頼は、20年経った今でも継承されている。

川端 由美 モータージャーナリスト
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