埼玉のホテルが3年で収益を倍増させた理由 リピーター6割を生むスタッフの「自発力」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「ホテルグリーンコア本館(幸手)」をはじめ埼玉県と茨城県で4つのホテルを経営している。数多くの常連顧客に支えられ、繁盛ホテルになっている。

全宿泊者に占めるリピーターの割合は6割以上、近年は4つのホテルとも増収増益を続けている。円安に伴う訪日外国人客が急増する前の本館は2010~2013年の3年間で売り上げを2.4倍に高めた。国土交通省によれば都道府県別の延べ宿泊者数で圧倒的に1位なのは東京都。その東京を100としたとき、2位の北海道がその約半分。茨城県や埼玉県は東京の1割以下で30位前後と、ホテル宿泊客が押し寄せる地域ではないにもかかわらずだ。

スタッフは、お客以上にお客のことを考えて行動する

このホテルグリーンコアが、まさに集団の輪を乱さずに個人のパフォーマンスを最大限に発揮するマネジメントをしている。そのマネジメント手法については、ノウハウと事例エピソードを拙著『包むマネジメント』(ぶんか社)にまとめている。台湾版も出版している。

ホテルグリーンコアは、お客に積極的に関わっていく「アプローチ・オペレーション」という接客スタイルを全社で取り組んでいる。立地の良さや最新鋭の建物・設備といったスペックを強みにして効率化や生産性を高めて利益を生み出す大方のビジネスホテルとは逆のスタンス、つまりスペックよりもスタッフの魅力を磨き、お客のニーズを引き出し、それに応えていく運営スタイルだ。

画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

スタッフは、お客以上にお客のことを考えて行動する。たとえば、チェックインの際に、宿泊客が「明日の出発が早朝になる」と伝えると、フロンとスタッフは「目覚まし時計だけだと不安でしょうから、私がお電話入れますね」と声をかける。枕にバスタオルを巻いて寝ている人がいたら、翌日からはバスタオルを2枚入れておく――。こうした細やかなサービスによって、お客は無意識に「ここ、なんか、居心地がいい」と感じてしまい、いつのまにかホテルグリーンコアとグリーンコアのスタッフのファンになってしまう。

このアプローチ・オペレーションを下支えしているのが、スタッフの自発性である。自発性を育むポイントは2つ。ひとつは、「スタッフのやっていることに口出ししない」ということ。経営者は、黙って見守る。ただしそれは、放任主義ではない。そして、干渉もしない。

平たく言うと、「手は放すが、目は離さない」というスタンスを貫いている。干渉はしないけれど、スタッフの変化を拾う。プラスの変化は加速させ、マイナスの変化は、流れを変えるストロークを打つ。この絶妙なマネジメントによって、「スタッフが夢中になって働き出す」という結果をもたらす。

このようなマネジメントによって、個人の力を制限することなく、集団の力を最大限にしている。根底には、「まわりの人の役に立ちたい」という気持ちなのだが、いま、日本に来ている中国人観光客には、日本のこんな部分にもぜひ注目してもらいたい。

近藤 寛和 宿屋大学 代表

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

こんどう ひろかず / Hirokazu Kondo

1967年生まれ。法政大学経営学部卒業。1992年オータパブリケイションズ入社。2009年にオータパブリケイションズの一事業として運営していた宿屋大学を企業としてマネジメントするために独立。著書に『和魂米才のホテルマネジメント~グローバルスタンダードの成功法則』『巡るサービス なぜ地方の小さなビジネスホテルが高稼働繁盛ホテルになったのか』(オータパブリケイションズ)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事