高級食器クライシス、相次ぐ経営破綻

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業務用の世界でも、高級食器の存在感は薄くなっている。90年代から日本では肥沃な市場を狙って、外資系高級ホテルの進出が相次いだ。それらホテルは当初、高級食器を採用していたが、「最近はアジア製が多い。有名なホテルほどコスト意識の強さが見え隠れしている」(洋食器メーカー幹部)。

日本だけでなく、世界で名の知れたホテルやレストランが高級食器の新規購入を取りやめている。その影響で、米国では4月に業務用の老舗メーカーが国内生産を停止、海外へ全面移管することが波紋を呼んだ。

だが、洋食器の世界的不況は巡り巡って、中国メーカーにも波及してきた。欧米市場の需要が減少し、過剰在庫が重荷になって「生産地である広東省でもメーカーの倒産が目立ってきた」(業界関係者)という。

日本メーカーはこの状況をどう乗り切ろうとしているのか。国内外で食器事業の生産縮小を進めたノリタケは「量を追わないで中高級品に的を絞る」(馬渕執行役員)。開拓するのは海外で、アジアなど新興国の富裕層向けに期待を寄せる。鳴海製陶が力を入れるのも、「東南アジアや中近東の5つ星ホテル向けなど」(西村執行役員)。中期的に需要は大きいと見ている。

ただ欧米の高級ブランドと比べると、日本ブランドのイメージは「中の上」。新興国での成長も楽観視できない。そして数少ない有望市場には、欧米ブランドも“ラストチャンス”を賭けてくるはずだ。高級食器業界で、ブランド存亡を懸けたサバイバル戦が始まろうとしている。

堀川 美行 東洋経済 記者

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ほりかわ よしゆき / Yoshiyuki Horikawa

『週刊東洋経済』副編集長

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