日産「リーフ」はカッコよければヒットしたか 先進的な日本車が「無理しがち」なデザイン
リーフのフロントフードを開けると、その眺めはガソリンエンジン車のようだ。モーターとインバーターを積み重ねた上に、エンジンを思わせるカバーが装着されている。まったく新しいクルマとしてリーフをアピールしたいのか、既存のクルマに似せたかったのか、ここだけ見ても判断に迷う。
似たような傾向は、2014年末に史上初の燃料電池市販車として登場したトヨタ「MIRAI(ミライ)」にも見られる。新開発プラットフォームを用いた4代目の新型プリウスとは対照的に、ミライはガソリン車のプラットフォームをベースとしている。そのためかリーフと同じ前輪駆動であり、モーターはフロントに置かれ、残りの場所に燃料電池スタック、2本の水素タンク、バッテリーなどを配置している。
その結果、ミライのパッケージングは前後が長く、キャビン(乗員室)の背が高い、既存の多くのセダンとは異なるものとなった。これをベースに、フロント左右に空気を取り入れるための大きなインテーク(開口部)を備え、ボディサイドは水の流れをイメージするようにラインを入れた。
「制作の苦労が伝わるデザイン」は是か
どちらも既存の内燃機関自動車のパッケージングを基本としたために、独特のプロポーションになった。そこに次世代エネルギー自動車であることを強調すべく、凝った造形を盛り込んだ。2台ともに、それをまとめるまでには相当の苦労があったことが伺えるが、制作の苦労が伝わるデザインが、果たして素晴らしいものなのかという思いは抱く。
同じEVでもテスラ「モデルS」は、まったく異なるアプローチでデザインされている。
そもそもテスラ自身、完全自社開発の自動車はこれが初めてだ。ゆえにプラットフォームは他車との関連がない、完全な新開発だった。床下全面に電池を敷き詰め、モーターは後車軸の位置に置かれる。4WDはプロペラシャフトを持たず、前車軸にもうひとつモーターを追加して対処している。
しかしプロポーションは流麗で、ガソリン車と見紛うほどまとまっている。EVであることを強調する造形もない。車内に入れば、フラットなフロア、インパネ中央の巨大なディスプレイ、前後に用意された荷室などで、独特の構造が理解できる。しかしモーターや電池は床下に積んでおり、それを見せるための仕掛けはない。
既存の内燃機関自動車をベースとしたEVでも、テスラに似たデザインの考え方を持つクルマはある。日産とアライアンスを組み、日産同様EVに積極的に取り組むルノーの「ゾエ」だ。
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