常識覆す快進撃のルミネ、駅を飛び出し新業態に挑戦《鉄道進化論》
「駅ビル」の常識をはるかに超え、顧客に支持され続けるファッションビル。ルミネをあえて一言でいうなら、こんな言葉がふさわしい。
ルミネはJR東日本グループでSC運営を担う有力企業の一角。「消費不況」「衣料販売不振」と他社が嘆く中、前09年3月期も逆風を乗り越え、10期連続増収増益を達成した。
主な顧客のターゲットを20代、30代の働く女性やカップルに絞り込んでいることも業績好調の要因だが、同社の強さの源泉は「人の絆」にある。約350人のルミネ社員と、13店舗、計1600の専門店で働く約3万人の販売員は、籍は別でも同一企業の社員のようなものだ。
6月に会長となった花崎淑夫氏は01年の社長就任時、社員に「テナント」という言葉の使用を禁止した。専門店=パートナーであり、「顧客と接する各店の販売員こそ利益の源泉」との考え方を社員に徹底させた。それだけではない。本来ならライバルである専門店同士も積極的に交流させた。接客技術などを公開し合い「館」の一体性を高め、売り上げ増につなげている。この「ルミネ式」は他もこぞってまねをするが結果を出している商業施設は少ない。
その同社が8月、久々に新店をオープンする。14店目の店舗は「ルミネマン渋谷」(写真)。10代後半~20代前半の男性を主要顧客に据えた、同社初の「メンズ専門館」だ。確かにルミネは立川など他店舗でも男性向け店舗を手掛けてきた実績はある。
だが、女性顧客が約8割を占める同社がなぜわざわざ男性顧客をメインターゲットにするのか。しかも、今回の出店はJR東日本所有地有効活用の側面があるとはいえ、地上4階建て、店舗面積は約970平方メートルと広くもない。従来のように駅直結でもない。
開業準備を担当する中尾利孝業態マネジメント部マネージャーは「レディスに比べればメンズの市場規模は約5分の1程度。だが、メンズは女性に比べて他店への『浮気』が少なく、顧客を開拓できる余地がある」と可能性を口にする。新店には16店が入居の予定だが、「各店には互いの個性を発揮してもらいつつ、館全体が一つのブティックに見えるような売り場づくりを目指す」(同)。
ルミネの快進撃は「駅直結の好立地に安住しないこと」で加速した。顧客は自ら創造するもの--。駅立地を離れ、ルミネの挑戦が始まる。
(週刊東洋経済)
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