成田アクセス争奪戦、新線、新型車両を投入《鉄道進化論》

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 もちろん京成独自の事情もある。バスに対抗する鉄道の優位性は速さと乗り換えなどの利便性だ。だが、京成の弱点はこの乗り換えにある。ターミナル駅である日暮里や京成上野での乗り換えが不便なのだ。そこでまず日暮里駅の改良工事を進めている。下りホーム、コンコース、上りホームの3層構造にして、混雑緩和とともに山手線などJR線への乗り換えをスムーズにするためだ。

一方のNEXの最大の強みは横浜、新宿、大宮などへの拠点ネットワーク力である。成田空港は滑走路の延伸により10年3月には発着回数の拡大(年20万回から22万回へ)が予定されており、これを受けた増発も想定される。新線開業と発着回数拡大が重なる10年度は、リムジンバスを含めた成田アクセス競争がさらに激化しそうだ。

競争と協調、首都圏の鉄道網でこれを象徴する出来事が東武鉄道の特急スペーシアのJR新宿駅乗り入れである(06年3月)。かつて東武とJRは“日光戦争”を展開しており、その象徴がスペーシアだった。これが新宿発着になることで、JRは日光とともに鬼怒川温泉へのルートも獲得したことになる。もちろん、東武にも狙いがあった。「東京西部や神奈川県下から日光方面の観光客が見込める」(東武鉄道営業企画課長・目崎敏雄氏)ことだ。

これに驚いたのが小田急電鉄である。新宿は箱根行きの特急ロマンスカーの発着駅。東武の進出によって箱根への顧客を日光へ奪われかねない。返す刀で投じた策がロマンスカーの東京メトロ乗り入れだ(08年3月)。北千住と新木場発着で千代田線と有楽町線を通り、箱根、神奈川方面に向かう。私鉄特急の地下鉄乗り入れは初めてである。トンネルの幅に合わせた新型車両60000形(MSE)が投入された。

今後も相模鉄道がJR(15年)、東急(19年)との相互乗り入れを予定するなど、首都圏鉄道網における“競争と協調”は続く。

(週刊東洋経済)

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