日産エコカー戦略の野望、戦いのルールを変える!

拡大
縮小


 日産の電気自動車は、大人5人がちゃんと乗れる大きさで、価格も従来の車と同じくらいになる。そしてゴーン社長が強調するのは、車両は販売するが、LiBはリースにするということだ。

車に関係する法律や制度は各国・各地域で違うため、地球上すべてでリース方式が適用できるかは今後を見守る必要がある。しかし、一つだけはっきりしていることがある。この電池分割リース方式は、自動車業界のビジネスモデルを大転換させる可能性を持つという事実だ。

ゴーン社長はじめ幹部の発言をつないでいくと、“野望”の輪郭があらわになる。まず、顧客は車両ボディだけを購入する(下図)。LiBは日産から借り受け、携帯電話のように月々の基本料金+走行距離に応じたリース代を支払う。この料金と別途充電に必要な電力料金との合計がガソリン代と同程度なら、電気自動車は十分に魅力的な購買対象となる。

1キロメートル走るのにガソリンが10円、電気が1円--実際、深夜電力で充電したらそんなものだ--とし、差額の9円をリース代としよう。自動車での性能保証基準は一般に15年/24万キロメートルとされており、電池がこのとおりフルに利用されたとき、日産側が手にするリース代の累計は24万キロメートル×9円=216万円となる。業界では、LiB1基のコストは200万~300万円といわれており、単純に考えてもリース方式でのコスト回収は絵空事ではない。

さらに注目したいのが、日産の研究開発トップである山下光彦副社長のある“構想”だ。「バッテリー容量が落ち、航続距離が減った電池を二次利用できるルートがあればいいと考えている。たとえばビルの予備電源。現在使われている鉛電池に比べれば、車としては物足りなくなったバッテリーでも十分に機能する」。使用済み電池にも消耗度に応じた残存価値がつくかもしれない。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT