人はなぜ年を取ると、「太りやすくなる」のか 今さら聞けない「肥満対策」の基礎知識

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痩せるためには、どのように食事を減らしていくべきかについて話を戻そう。食生活の改善として大切なのは、「カロリー」と「糖質」の2つである。「カロリー」については、意識して減らしている人も多いだろう。しかし、「糖質」については、あまりよくわかっていない人も多いのではないだろうか。

最近は、「糖質制限」という言葉をよく聞くが、「糖質は毒だ!」という極端な考え方をしている人もいるようだ。そこでここでは、糖質とは何か? なぜ、糖質と肥満は関係するのか? そして正しい糖質制限とは? ということについて、簡単に説明しよう。

「糖質」と「肥満」の関係を知ろう

まず、糖質とは何か? パッと思い浮かべるのは「白米」「パン」などの炭水化物だろうが、実はそれだけではない。糖質は、野菜やフルーツなど、ほとんどすべての食べ物に入っている。そもそも糖質を多く摂取するとなぜ太るのか?それは、糖質とインスリンの関係にある。糖質が体内に入ると、次のような反応が起きることをまず知ってほしい。

① 糖質を食べる
② 糖質がブドウ糖に変わり、血糖値が上がる
③ 血糖値を下げるインスリンが分泌される
④ インスリンが、糖分をエネルギーとして細胞に送り出す
⑤ インスリンが、余分な糖分を中性脂肪に変え、脂肪細胞に蓄える

つまり、糖質を食べ過ぎると⑤にあるように、インスリンの働きによって、中性脂肪がどんどんつくられるということ。そして、内臓脂肪、皮下脂肪の9割近くは、中性脂肪が原因といわれている。糖質を過剰摂取すれば肥満になることはおわかりいただけるだろう。

しかし、極端に糖質を減らすのはNGである。④を見てもわかるように、糖質は体にとっては必要な栄養素であり、減らしすぎは禁物だ。とはいえ、なぜこれだけ糖質制限が叫ばれているかといえば、飽食の時代に生きる私たちは、糖質を“過剰”に摂取しているからだ。正しい糖質制限は、この「過剰に摂取している分を適正な量までもどすこと」だと考えてほしい。決して極端に減らす必要はなく、その量を是正することが必要なのだ。

正しい量は、人それぞれの食習慣にもよるが、1日三食を食べている人であれば、1日3食のうち1食分の炭水化物を抜く、これくらいがちょうどよいだろう。

ダイエットの理想は、「旅客機」の着陸

ここまで、太らない・痩せるための基本的な情報を説明してきたが、最後に、「ダイエット」についても少し触れておきたい。

「痩せたい!」と思う人の中には、1か月で5kgといったレベルのダイエットを実現したい人もいるだろう。もちろん、いろいろな誘惑を我慢し、極端にカロリーや糖質を減らせば、1か月でそれくらいの体重を減らすことは可能だ。しかし急激な減量では、減っている体重のほとんどは水分や筋肉。体脂肪だけが減っていることはない。

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すると怖いのは、リバウンド後、である。急激なダイエットで落ちた筋肉を戻すには、相当なトレーニングが必要。ダイエットの反動で食べ過ぎてしまい、体重がまた戻ってしまった場合、同じ体重に戻ったとしても、脂肪は以前より増加しているのだ。すると、体脂肪が多くなる分、痩せにくくなるし、減量前に比べて体型も悪くなってしまうのである。
もちろん急激な減量は、体への負担も大きいので、健康を考えてもオススメできない。

急激なダイエットは、ジェット戦闘機の着陸のようなもの。急降下すれば、それだけリバウンドなどのリスクも高いと考えてほしい。リスクなく痩せたいと考えるのであれば、旅客機のような軟着陸を目指してほしい。1か月で500グラム、1年で5~6キロを目安に、食生活の改善を中心に、必要な運動に取り組めば、体脂肪を減らしながら、リバウンドなく、健康的に、魅せる体型をつくっていけるはずだ。

秋津 壽男 日本内科学会認定総合内科専門医/秋津医院 院長

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あきつ としお / Akitsu Toshio

1954年和歌山県生まれ。77年大阪大学工学部で酒造りの基礎を学び卒業。社会人を経て再び大学受験をし、和歌山県立医科大学医学部に入学。86年卒業後、同大学循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコー等を学ぶ。東京労災病院等を経て、98年に東京都品川区の商店街・戸越銀座に秋津医院を開業し、地元密着の診療を行う

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