選挙の経済学 ブライアン・カプラン著/長峯純一、奥井克美監訳
たかが一票と思いつつ、されど一票と考えて投票に行く。結果は「衆愚」でなく、「集合知」であってほしい。投票者なら誰もがそう思っているのではないか。
本書は、有権者の投票判断の際のバイアスに焦点をあてる。大多数の有権者は、市場メカニズムを過小評価し(反市場バイアス)、貿易の利益も過小評価し(反外国バイアス)、その一方で労働の価値を過大評価し(雇用創出バイアス)、経済をあまりに悲観的に見通す(悲観的バイアス)傾向があるという。この「偏向」の結果、正しい政策は選ばれず、民主主義が台無しにされていると評定する。
「行動政治経済学」の手法で、投票行動の非合理性を分析して民主主義の矛盾を解き明かそうとしたもの。データ対象のアメリカの民主主義と違う形態と歴史を持つ日本では、どうようなバイアスがあるか検証がもちろん必要だが、民主主義のあり方を改めて考えるうえで格好の議論素材を提供してくれる。
日経BP社 2520円
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