いまダイバーシティ経営にどう取り組むか--谷本寛治・一橋大学大学院商学研究科教授

いまダイバーシティ経営にどう取り組むか--谷本寛治・一橋大学大学院商学研究科教授

 東洋経済新報社では、多様な人材を重要な経営資源として活かすダイバーシティ経営を先進的に進める企業を表彰することを目的として「ダイバーシティ経営大賞」を2008年に創設した。第2回目となる本年は4月に受賞企業が決定し、6月15日に表彰式及び記念シンポジウムを開催した。審査委員長で一橋大学大学院商学研究科教授の谷本寛治氏による基調講演をお届けする。

「ダイバーシティ経営大賞」は2回目を迎えることができましたが、ちょうど昨年秋からの非常に厳しい景気悪化の中で、この賞を実施することになりました。まさに募集をかけた頃が、さまざまな雇用問題が世間にかまびすしいときでありまして、ご遠慮された企業さんも幾つかあったようです。確かに非正規雇用の問題、あるいは正規雇用の大幅な人員削減など、厳しい雇用状況が続いております。

ただ、今回の景気の落ち込みは非常に大きいけれども、この危機を乗り越えるためにも、また次のステージを考えて新しい可能性を組み立てていくためにも、当然「人」の問題抜きではあり得ない。中長期的な眼で多様で有能な人材を育て、そして評価、登用していく。このことが基本となるということを、バブル崩壊以降の雇用状況の中で、多くの企業が学んだと思うのです。あまりにも短期的に雇用政策をとってしまいますと、その5年、10年、15年後にたいへん厳しいしわ寄せが来てしまう。

ですから、厳しいのは事実ですが、有能な人材を引き付けていくことが必要です。いま目の前にある課題をどうクリアしていくのかということと、しっかりと社会的責任ある企業経営をする、あるいは中長期的な経営を見据えて人をきちんと育てていくということとを、いかにバランスをとりながら進めていくか。まさにここはトップの大きな判断が求められるところなのです。

本賞の委員会のメンバーは、この危機の中にあっても、多様な発想と価値観を経営の中に取り入れていくことについて地道に努力を続けておられる企業さんをきちんと見据えていくことがわれわれの使命であると、その責務の重要さを感じております。

本賞の審査に当たってのポイントは三つ。まず一つ目は、ダイバーシティ経営の理念あるいはトップのコミットメントが明確で、実践が伴っている。たとえば中期経営計画にCSRが大事であると書いてあっても、実際には各ラインに落ちておらず、アクションプランの中まで見ていくとどこかで消えてしまっていた、というようなことでは意味がありません。

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