いまダイバーシティ経営にどう取り組むか--谷本寛治・一橋大学大学院商学研究科教授


 それぞれの取り組みにつきましては、この後のパネルディスカッションの中で詳しくご紹介があると思います。そこで、今日はダイバーシティ経営にどう取り組むかという、本当に基本的な入口のところについて二つのこと--まずダイバーシティ経営とは何かということ。それから、それを実現するにはどうしたらいいのか。特に働き方を見直す、あるいは制度を具体的にどう動かしていくのかということ--をお話ししておきたいと思います。

日本の場合、ダイバーシティ経営というのは、ともすると女性活用あるいは女性支援制度に焦点が当てられがちです。これが重要なポイントの一つであるのはもちろんですが、ダイバーシティ経営というのは、基本的には、国籍、民族、性別、年齢、障がいなど、さまざまな背景の違いを超えて、多様な考え方や価値観を活かした経営を行なうということです。

同じダイバーシティといいましても、米国、ヨーロッパ、アジアに行くと、また違ったそれぞれの考え方があります。近年、日本の企業組織を見ておりますと、一昔前と違って、同じ組織の中に多様な人が働くようになってきたことを実感いたします。基本的にはもちろん、正規社員、非正規社員とか、派遣やパートなどさまざまな雇用形態の方々がおられるということだけではありません。ただ雇用を縮小するというような日本的な狭い意味ではなく、しばしばM&Aなども絡んで、組織のリストラクチャリング、まさに組織をつくり変えていくことが進んでいる。そうすると、これまでの社員にはなかった新しい分野の人が新たに加わって、価値観や発想あるいは組織に対するコミットメント度合いが異なる方々が実際に混在して仕事をするようになってくる。ここは一つ、大きなポイントだと思うのです。それをいかに一つの力にまとめていくか、今後そういうことがますます問われるようになってくる。

さらに企業経営はたいへんグローバル化している。したがって、現地法人の経営のあり方を考えるということも一つのポイントですし、グローバルな経営体制の中で多様性を持った視点をいかにとらえていくかが求められる。その意味からもダイバーシティ経営ということが重要なキーワードになってきます。

しかし、CSRもそうですが、皆さまが感じておられるとおり、こういったものは一日でできるものではありません。非常に難しい問題だと思います。担当部署を設置したり休暇制度を設けたりといった制度の整備は、トップの指示の中である意味簡単にできることかもしれません。しかし、それらを実際にどう運用するか。また、運用できたとしても、短期的になかなか成果が表れるものではない。だから、中長期的な経営理念と戦略に基づいて、こういった制度整備をきちんと継続してやるということと、実際に組織の中で意識改革を同時に進めていくことが大事になってくるわけです。

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