いまダイバーシティ経営にどう取り組むか--谷本寛治・一橋大学大学院商学研究科教授


 特に働き方を見直すということが重要だと思います。マクロの数字を見ても、日本の労働生産性というのは非常に低い。OECD加盟30カ国中20番目。先進7カ国では、なんと15年連続最下位です。しかも、ここ数年ほとんど変わっていない。これはやはりちょっと考え直さなければいけない数字だと思います。

ですから、仕事のあり方を見直すということが求められます。パナソニック電工さんは「仕事ダイエット・プロジェクト」と銘打って、日々の仕事の無駄の削減を進めておられますけれども、こうした全社的に重要度の低い仕事はやめる、効率性を高めるということがなければいけない。日本の組織の中には、組織あるいは職場で長時間一緒にいるというワークスタイルを評価するようなところが、根本的にはまだまだ残っているのではないか。長時間ともにいるということ自体を評価するようなワークスタイルをもう一度見直すことが本当に必要だと思います。

人が生き生きとして一人ひとりが働ける、自立したキャリアとテーマを持って仕事できるという職場は非常に重要でありますけれども、同時に、風通しのよい組織でなければ、これは難しいと思う。つまり、コミュニケーションがうまく機能しているかどうかです。

ある会社の社内調査で、私がお伺いしたときに、こういうことを言っておられた会社がありました。会社に対するロイヤルティ、あるいは、自分がいま担当している仕事について家族に説明できるかという点については非常に高いという数字が出た。つまり、この会社で頑張ろうという意識はたいへん高いと判断されるのですが、他方、組織のコミュニケーションについては非常に低い数字が出て、これは検討委員会を設けてあらためて考え直さなければならないと言われておりました。つまり、上からの情報がなかなかきちんと伝わってこなかったり、下から上げた情報がうまく上に伝わっていかない。コミュニケーションが必ずしもスムーズじゃないということを多くの社員が感じておられるケースですね。

やはり組織の中で情報伝達する、あるいは物事を決めていくときの風通しの悪さというものは、基本的に会社の中にあってはならないことですし、こういったことは実はコンプライアンスの問題においても大きな足かせになってくる。たまたま一人の社員がインサイダーでやったというようなことはあるかもしれませんけれども、多くの場合は「組織を守る。自分だけではなくて、仲間のやったこと、あるいは部でやったこと全体をなんとか守って外部に出ないようにしよう。このままではみんなに迷惑をかける」というかたちで、これが悪いほうに機能していく。コンプライアンスにかかわる問題についても常にきちんと話ができる、まさにピアディスカッションができるような組織風土、発言しやすい環境をつくっていくことが重要なポイントになってきます。

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