日米航空交渉、4年越し決着でも燻る"火種" 問題は2国間の交渉だけではなかった
では、そんな交渉がなぜ、合意まで4年以上の歳月を費やすことになったのか。
「非常に残念だ」──。日米の航空会社が軒並み今回の合意を歓迎する中、唯一不満をあらわにしたのが米デルタ航空だった。交渉の長期化は、同社が一貫して反対してきたことに起因する。
デルタは成田発着では最も多くの日米路線を有し、アジアへの乗り継ぎ路線も飛ばしている。合併前の旧ノースウエスト航空が戦後、羽田に国際線を飛ばしていたが、1978年に成田を国際線拠点として開港した日本政府の意向に沿って、同空港へ移ってきた経緯があり、歴史は長い。
また、米ユナイテッド航空と全日本空輸(ANA)、アメリカンと日本航空(JAL)は、それぞれ「スターアライアンス」「ワンワールド」という航空連合を組み、共同運航やマイレージ連携を進めている。一方、デルタが属する「スカイチーム」には、日本の航空会社がいない。ゆえにデルタは「より多くの枠をもらえなければ、公正な競争環境が保たれない」と主張してきた。米航空当局も「強い政治力を持つ」(国土交通省幹部)デルタの意向を酌んできた。
だが、2015年11月のフォックス米運輸長官と石井啓一国交相の会談で、羽田の昼間帯に日米便だけ運航がないことへの懸念が示され、翌12月に当局間の交渉が再開。デルタ以外の米航空会社や業界団体も合意を望んだことから、「米国当局も全体的な利益で判断した」(前出の国交省幹部)。結果的にデルタが押し切られる形となったわけだ。
ANAが2枠を獲るのか
ただ、これで一件落着、というわけでもない。次の火種となりそうなのが、日本国内での発着枠の配分だ。石井国交相は日本側の配分について「各航空会社の要望や『8.10ペーパー』の趣旨を踏まえ適切に判断したい」とする。
8.10ペーパーとは、公的支援で再生したJALが公正な競争環境を阻害しないよう、同社の新規投資や路線開設を国交省が監視する旨を明記したもの。これに基づき、2014年の羽田国際線の増枠時にはANA11枠、JAL5枠の傾斜配分を行った。今回決まった日本側の発着枠6つのうち、新たに配分されるのは昼間1枠と深夜早朝1枠。仮に前回同様、枠数で差をつけるなら、2枠がANAに配分される可能性もある。
ANAホールディングスの片野坂真哉社長が「(ペーパーに沿えば)発着枠を優先的にわれわれに傾斜配分するという理解」と主張するのに対し、JALの乘田俊明専務は「配分は当局の考えによる。われわれはコメントする立場にない」という姿勢だ。
冬ダイヤの就航に間に合わせるには、5月の連休前が配分決定のタイムリミット。今後「非常に貴重な枠」(JALの植木義晴社長)をめぐる争いが過熱しそうだ。
(「週刊東洋経済」2016年3月5日号<2月29日発売>「核心リポート04」を転載)
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