欧米型・カジノ資本主義の限界が見えてきた みんなを幸せにする「公益資本主義」のすすめ
原:その通りだと思います。株主資本主義のもとでは、IRR(インターナルレートオブリターン)といった評価軸が使われています。1年よりも3カ月、3カ月よりも1カ月、1カ月よりも10日と、短期であればあるほどよいとされています。そうなると中長期の研究開発よりも短期で利益が出る事業がよいわけですから、金融しかないのです。株主資本主義はゼロサムゲームであり、カジノ資本主義とも言えるでしょう。株主資本主義と市場万能信奉とが組み合わさると、投機的な金融資本主義が生まれます。まさに現在がそうです。
新興国にも公益資本主義を
原:株主資本主義はマネーゲームですから、結果的に圧倒的なおカネ持ちと、まったく持たざる者に二極化して中産階級層が減少し、社会不安を招きます。なぜイスラム国やボコ・ハラムが力を持つようになったのか。それは資源国でありながら、国民ひとり当たりの所得が非常に低く、貧富の格差が激しいからです。まともに働くよりも、過激派組織に入ったほうが高い収入が得られるため、加入する人々が後を絶たないのです。
この動きを止める方法はただひとつ。その地域の中産階級層を増やすしかない。だからこそ、利益を企業に関わるすべての社中(顧客、従業員、仕入れ先、地域社会、地球、株主)に分配し、中長期的な経営を推進するといった公益資本主義の考え方を新興国に広めていく必要があるのです。空爆や地上軍派遣などの武力では何も解決しません。私は毎年のように新興国の大統領ら指導者に会い、この重要性を説いています。
大久保:中産階級層が減ると教育水準の低下を招く恐れもあります。日本でも親の所得格差によって子供の教育の選択肢が狭まっている現状があり、これが格差の連鎖につながっていきます。いかにすれば中産階級層が増えるのかを、真剣に考える必要があります。
原:安倍首相は民間企業に対して賃金を上げろと言っていますが、もっと効果的な方法があります。それは、株主に対する配当金を引き上げたり、自社株買いをした企業に対しては、同じ率で社員の給与も引き上げることをルール化すればよいのです。そうすれば、増配や自社株買いの率も給与引き上げ率との兼ね合いでバランスよく決まることになるでしょう。
大久保:給与は「費用」ではなく、社員に対する「分配」と捉えるということですね。
原:その点でいうと、キャピタルゲイン課税の税率が所得税率より低いのもおかしな話なのです。バランスを取る必要があります。さらに、国境を越えて移動する投機資金にはその都度課税すれば、投機資金が世界を駆け巡り暴れることを少しは抑えることができます。投機から得られる所得ではなく、給与の所得への課税が優遇されるべきです。
大久保:昨今、コーポレートガバナンスの強化が声高に言われ、企業に社外取締役の増員を要請する動きがあります。まさに欧米に倣えということですが、私は社外取締役を増員したところでガバナンスが適正に機能するとは思えません。どう考えますか。
原:私は米国、イギリス、イスラエルの非上場と上場企業で社外取締役を務めてきました。その経験から言わせてもらうなら、米国型の社外取締役制度を日本に導入するべきではありません。なぜなら、社外取締役は会社を良くするために存在するものではなく、訴訟に対するリスクヘッジのために存在しているからです。
例えば、外部から訴訟された時、「うちには社外取締役がいて、ガバナンスが機能しています」などと言い訳する存在となっているのが実態です。そもそも、アメリカン航空やヒューレット・パッカードのように、株主に偏重した利益配分をしている経営に何も言わない社外取締役に何の存在価値があるでしょうか。
特に米国型の社外取締役制度を日本に導入したら、日本企業の秩序、従業員のモラルを破壊すると言い続けてきたのですが、日本企業も米企業に倣えで、社外取締役を増員し始めました。
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