エコ景気刺激効果は失速へ、需要を先食い、迫る2番底の恐怖

拡大
縮小

製造業や流通業などで約12万人分の雇用創出効果があるともそろばんをはじく。CO2削減効果も年間400万トンに上るといい、「消費と環境の間に好循環が生まれる。海外の注目度も高く、他国で導入されれば日本の電機メーカーの市場開拓にもつながる」(同)と期待は高い。

消費行動がブレるだけ むしろ経済を不安定に

だが消費の最前線での効果は限定的だ。市場調査会社GfKジャパンの調べでは政策適用がスタートした5月15日以降、一部商品が明らかにハネ上がったが、それから1カ月を経て徐々に折れ線は下を向き始めている。5月第2週に一瞬、前年同週を上回ったエアコンに至っては翌週からは前年割れだ(下グラフ)。

家電量販店の間でも、エコポイント制度への期待は高くない。政策期間が10年3月末までのため、「スタート前の買い控え、終了後の反動減を考慮すれば、対象品目の販売数量は結局例年並みに落ち着く」(ヤマダ電機の岡本潤専務)。

直接の恩恵を受けるため、表向きは歓迎している家電メーカーもホンネでは冷めているようだ。「日本への売り上げ依存度は小さく、テレビ事業へのプラス影響は大して見込めない。もちろん政策を歓迎していないわけではないが……」(ソニー幹部)。欧米の消費収縮で大きな打撃を受けた海外売上比率の高いメーカーにとって、政策の慈雨は存在感が乏しい。それよりも成長拡大が見込まれる新興国市場での販売拡大戦略に力が入る。

経産省は、エコポイントの主眼は家電産業の振興策ではなく、あくまで個人消費を促すものだとしている。だが実は、消費者の反応も鈍い。IT調査会社MM総研のインターネット調査(対象1121人)によると、政策があっても省エネ家電の購買意欲が湧かなかった人は56%にも上り、湧いた人の21%を大きく上回った。夏のボーナスの減少などが、消費者に財布のヒモを固く締めさせているようだ。

「エコポイントはほかのモノを買わずに家電を買い、購入のタイミングを前倒しにするだけ。長い目では経済効果はあまりない」。野村證券金融経済研究所の木内登英・経済調査部長は5月下旬の参議院予算委員会で参考人に立ち、こう指摘した。そればかりか、政策時期前後の消費減などを考慮すれば「消費行動はかなりボラタイル(変動的)になり、経済をむしろ不安定にさせる」。

エコポイント制度の導入時には、にぎわう店頭のイメージとオーバーラップして「景気底打ち」のムードを演出する効果は大きかった。が、すでにその効果は失われ、厳しい現実が横たわる。

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