『脱「ひとり勝ち」文明論』を書いた清水浩氏(電気自動車開発者、慶應義塾大学環境情報学部教授)に聞く
電気自動車はいままでのようにエンジンルームにモーターを置く必要はない。車輪の中にモーターを置けばいい。フレーム構造の中に電池を入れてしまえばいい。大きな車輪を四つ着けるのではなくて、小さな車輪を八つ着けたほうが効率性は高い。ただ8輪がベストかどうかはまだわからない。
新しく開発された技術を使うと、乗り心地、加速感、車内の広さとも、ガソリン自動車を超すものになるし、形も変わってよい。では値段はどうかとなると、大量に作れば十分安くなる。電気自動車は部品の点数が少なくて構造が簡単だからだ。
--なぜ量産化に踏み切れないのでしょうか。
試作品ができたらすぐ製品化するのかというと、信頼性、耐久性、安全性が製品としては確実に要求される。そのためには大きなおカネをかけて、開発を続けなければいけない。さらに製品化したら大量生産にすぐ踏み切れるかと言えば、どうしても初めは値段が高い、あるいは競合製品がある。そういう条件に打ち勝って大量生産にいくことになる。
--自動車メーカーの電気自動車と何が違うのですか。
自動車メーカーの電気自動車はガソリン自動車のボディを改造して作ったもの。私も1台目は改造車。簡単に作れるから。だが、エンジン自動車は、モーターと電池を載せるのに都合がよいわけではない。
--メーカーがいっしょにやろうと言わないのでしょうか。
既存の技術、構造をそう変えたくないということだ。全面的に電気自動車になれば産業構造が大きく変わる。それに対して抵抗感がある。大事なことは過去の技術の変遷では、新しい技術に変わるとマーケットが圧倒的に大きくなることだ。原理的にはうまくいっているのだから、早く置き換えるほうがいい。