生保、マイナス金利でリスクテイクが困難に 国債金利急低下が生保の経営体力を圧迫

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保険料は値上げされる?(写真:sasaki106/PIXTA)

日本銀行は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入に際し、金融機関が日銀に預けている日銀当座預金を3階層に分けた。そして、すべてをマイナス金利の対象とするのではなく、既往の残高等を上回る部分にのみマイナス金利を適用することで、金融仲介を担う金融機関の収益に過度な悪影響が出ないよう配慮した。

だが、生命保険会社に対しては特段の配慮はなかった。イールドカーブを一段と押し下げる新たな政策の実行は、生保の経営にとって非常に厳しいものである。金利水準がさらに下がったことも痛手だが、短期決戦であったはずの金融緩和が長期戦となり、低金利環境からの脱却が見通しにくくなったこともショッキングであろう。

マイナス金利政策の真の狙いは通貨安を促すことにあるとも言われる(黒田総裁は会見では否定している)。とはいえ、以下では今回のマイナス金利政策の導入で金利水準が一段と下がったことが、生保経営にどのような影響を及ぼすのかに的を絞り、解説したい。

低金利は生保のバランスシートを毀損する

ファイナンシャルプランナーによる解説記事などを見ると、マイナス金利政策のデメリットとして、「運用難で生保の保険料が値上がりするおそれがある」というものが目立つ。保険料が引き上げられるかどうかはさておき、より重要な点は、金利水準の低下が多くの生保のバランスシートに悪影響を与えるということだ。

多額の国債を保有しているのは生保も銀行も同じであるが、銀行は総じて「短期調達・長期運用」という事業構造であり、金利水準の低下は国債など運用資産の価値を高めるため、まずはバランスシートの健全性を改善させる。利ざや縮小などの悪影響が出るのはその後の段階である。

これに対し、生保の事業構造は、「超長期調達・長期(超長期)運用」となっている。生保は契約者に対して超長期の保障を提供しており、保障を担うための手段として国債(超長期国債)を保有している。金利水準が下がると運用資産の価値が高まるのは銀行と同じだが、それ以上に超長期の保障を担う(=超長期で保険契約者から借り入れをしている)負担が重くなり、バランスシートの健全性は、まず、実質的に悪化してしまう。

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