生保、マイナス金利でリスクテイクが困難に 国債金利急低下が生保の経営体力を圧迫

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マイナス金利政策のデメリットとして指摘される「保険料の値上げ」についても触れておきたい。

すでに一部の会社・商品で料率見直しや販売休止の動きが見られるように、貯蓄性の強い商品(個人年金保険や終身保険など)を中心に保険料引き上げや売り止めの動きは広がっていくだろう。ちなみに、予定利率の引き下げが既契約に及ぶことはないため、加入している契約の保険料が値上げとはならないことも、念のため確認しておきたい。

保障性商品は直ちに値上げとはならない?

ただし、2013年4月に標準利率(生保が責任準備金を積み立てる際に使う義務のある利率)が1.5%から1.0%に下がった局面を振り返ると、貯蓄性商品の保険料が値上げとなる一方で、各社が主力とする保障性商品の保険料率を大きく引き上げた会社はなく、なかには料率を引き下げた会社もあった。

これは、かつての定期付終身保険が主力だった時代に比べると、国内系生保の主力商品は期間限定で保障を提供する「定期化」が一層進み、責任準備金を積み上げなくてもよい、すなわち、予定利率引き下げによる影響を受けにくい商品に注力しているためだ(長期の貯蓄性商品が主流となっている銀行窓販を除く)。

他方で、高齢化が進むなか、生保は長期保障の担い手として、ニーズの強い長期の貯蓄性商品を提供しなくていいのかという声もあるだろう。もちろん、現在のような金利環境では、魅力ある貯蓄性商品(顧客が運用リスクを全面的に負うタイプの商品を除く)を提供するのが一層難しくなっているのも確かであるが、例えばトンチン性の活用(死亡保障がない個人年金保険など)をはじめ、新たな長期保障を提供する取り組みが求められているのではなかろうか。

植村 信保 キャピタスコンサルティング マネージングディレクター

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うえむら・のぶやす / Nobuyasu Uemura

安田火災海上保険(現・損保ジャパン日本興亜)、格付投資情報センター、金融庁(任期付職員)を経て、2012年11月にキャピタスコンサルティングに参加。アナリストや行政官として保険会社経営を約20年間ウォッチしてきた経験を踏まえ、保険会社等の経営コンサルティングを実施。主な著書に「経営なき破綻 平成生保危機の真実」(日本経済新聞出版社)、「生保のビジネスモデルが変わる」(東洋経済新報社)などがある。経済誌への執筆、講演多数。2008年に中堅生保の破綻研究で博士号を取得(早稲田大学)。

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