生保、マイナス金利でリスクテイクが困難に 国債金利急低下が生保の経営体力を圧迫

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日銀は金利水準の低下によって、資産運用主体が国債投資からよりリスクのある株式や外貨建て資産への投資に向かうこと、いわゆるポートフォリオ・リバランスにつながること、を期待している。とはいえ、生保に関しては、引き続き大規模なリバランスは実現しないだろう。

なぜならば、マイナス金利政策による金利水準の一段の低下で経営体力が圧迫されているなかで、生保が取り得る選択肢に、株式や外貨建て資産等への積極的な投資によるリスクテイクがあるとは考えにくいためだ。経営体力の低下やさらなる金融緩和の可能性を踏まえれば、リスク削減やコスト抑制といった我慢の経営に徹する会社が多いのではなかろうか。

健全性指標がリスクコントロールの妨げに

金利低下の影響が、健全性指標として監督当局に活用されている「ソルベンシー・マージン比率」や「実質資産負債差額(実質純資産額)」には適切に反映されず、金利低下でむしろ生保の健全性が改善するかのような動きを示してしまうことも指摘しておきたい。

ソルベンシー・マージン比率は、生保の抱えるリスク量(一定の計算式で算出)に対し、純資産や各種準備金などの支払い余力をどの程度確保しているかを示したものだ。200%を下回った場合には、監督当局による行政措置がとられる(早期是正措置)。実質資産負債差額も行政監督上の指標であり、ソルベンシー・マージン比率とともに早期是正措置のトリガーとして位置付けられている。

ところが、いずれの指標も「資産は時価評価(一部資産は取得価額)」「負債は取得価額」という別々のモノサシのもとで算出するため、金利水準が下がると、実際には将来にわたる保障の提供が難しくなるにもかかわらず、時価評価される公社債の価格上昇だけがプラスに反映され、数値が改善してしまう。

このような問題は以前から指摘があり、金融庁は2007年以降、資産負債を一体的に時価評価する「経済価値ベースのソルベンシー・マージン比率」導入に向けた検討を続けてきたものの、現在に至っても内容・スケジュールともに明らかになっていない。当局の健全性指標には保険会社のリスク管理高度化を促す役割もあると考えられるが、金利変動リスクに関しては、むしろリスクコントロールの妨げとなってきた面は否定できない。

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