アウトレットの熱戦、三菱・三井の2強がガチンコ対決
田園地帯の一角にある巨大商業施設を目指し、車、車の大行列……。
7月9日、三菱地所が3月に連結子会社化したチェルシージャパンが運営する「あみ・プレミアムアウトレット」(茨城・阿見町)がオープンし、平日にもかかわらず開店と同時に大勢の顧客が詰めかけた。チェルシーにとっては2000年に初めて開発した御殿場(神奈川)から数えて8カ所目のアウトレットモール。アパレルを中心に104のテナントが出店したが、これは同社の開業時の店舗数としては過去最大。オープン前日のプレセールでも一般公募などで選ばれた約2万人が押し寄せた。「コーチ」や「ブルックス・ブラザーズ」など都心の百貨店や路面店で展開するブランド品が格安で買えるとあっては、さすがにこの不況下でも消費者の心は動く。
「はけ口」の効用
百貨店が11年連続、スーパーが12年連続で売り上げを落とす中、1990年代後半から出店が本格化したアウトレットモールだけは例外的に成長が続いている。この10年ほどで拠点数は35カ所と約2倍に。08年度の市場規模は約5000億円と百貨店の7・3兆円、スーパーの13・2兆円には到底及ばないが、前年比で約1000億円拡大。業界内でも存在感を強めている。牽引するのは三菱地所系チェルシーと三井不動産の「三井アウトレットパーク」の二強。売り上げ規模でも前者が1700億円、後者が1600億円とほぼがっぷり四つだ。
なぜこの業態だけが拡大するのか。現状では消費者、メーカーの双方がハッピーだからだ。消費者は週末を中心に、非日常の雰囲気を味わいながら、ゆっくりと買い物を楽しめる。モールにもよるが、1人当たりの滞在時間は約3時間にも上るという。
一方、メーカー側の利点も大きい。アウトレットを直訳すると「はけ口」。もともとメーカーが規格外商品や前シーズンの売れ残り品を処分する場だった。だが最近では位置づけが変わり、新しい流通チャネルとして定着している。
たとえばアパレルなら百貨店で正価では売れない商品を、同シーズンにアウトレットで販売して値引きロスを最小限に抑える。一方、アウトレット向けの専用品を開発し、ブランド価値を毀損せず利益を上げる企業も増えてきた。
積極的に顧客開拓の場として利用するブランドショップも増えている。ある高級ブランド店の幹部は「百貨店の高級ブランドが集まる『特選街』に出店しても、高層階に人は来ないし埋没してしまいがち。その点、平屋建てのアウトレットモールはファミリー層など幅広い層に気軽に来店してもらえる」と魅力を語る。