飯島彰己・三井物産社長--資源・エネルギーへの投資は手を緩めない
資源・エネルギー価格高騰の下、世界中に数多くの資源権益を持つ総合商社は近年空前の利益を計上し、産業界から「儲けすぎ批判」の声が出るほどだった。三井物産も得意とする鉄鉱石、石油事業を中心に好業績を謳歌したが、昨年後半からの世界景気悪化を契機に市況は急落。非資源ビジネスは需要減退などの影響で利益が吹き飛び、総合商社経営も強い逆風にさらされている。4月に就任した飯島彰己社長に今後の舵取りを聞いた。
--この数年、世界的な資源・エネルギー市況の高騰で、日本の総合商社はわが世の春を謳歌しました。
私の会社生活を振り返っても、本当によかったのはこの4~5年くらい(笑)。世界好景気で資源・エネルギー価格が高騰し、強い追い風を受けて凧のように舞い上がった。言わせてもらうなら、舞い上がれるだけの素地があったということ。たとえば、サハリンの天然ガス開発は1989年のプロジェクト検討から今年3月の初出荷まで、実に20年を費やした。鉄鉱石のローブリバー(豪州)も検討開始が62年で、やっと利益が出始めて配当ができるようになったのが82~83年。
先輩方が相当に長い期間にわたって仕込んだもので、一朝一夕に達成できた仕事じゃない。そうした歴史、地道な苦労があったからこそ、市況高騰の追い風を享受できたと思っている。
ただし、この数年はある意味、バブルだった。かつてない高水準の利益が続く中で、気づかぬうちに社内に気の緩みがあった面も否めない。実体経済がストーンと落ちたが、足元を見直すにはいい機会だ。各営業本部に対しては、自分たちの足元を冷静に見つめて、強み、弱みを再検証してくれと言っている。
--物産は過去3年で約9000億円もの資金を資源・エネルギー分野へ投じました。昨年後半からの市況悪化で、資源・エネルギー権益への投資姿勢も変わるのですか。
基本姿勢は変わらない。そもそも、日本には資源がない。世界を見ても、人口増加や新興国の経済成長で資源・エネルギーの需要は増えていく。また、21世紀においても鉄は非常に競争力のある素材であって、鉄鉱石や原料炭の需要増加も続く。ですから、資源・エネルギーへの投資は手を緩めてはいけないし、緩めていくつもりもない。