飯島彰己・三井物産社長--資源・エネルギーへの投資は手を緩めない
ただ、投資に当たっては、資源権益は既存案件の拡張投資を優先的にやっていく。というのは、ゼロからの新規開発は鉄道や港といったインフラも整備する必要があり、開発コストが非常に重くなる。まずはインフラが整備されてコスト競争力のあるところからやっていくのが基本。それだけでは足りないでしょうから、その後は、(未開発の)グリンフィールドからの開発も検討していく。
逆にいえば、資源の開発は、鉄道や港の開発・整備、建機やタイヤの販売などいろんなビジネスチャンスがある。当社の総合力を生かせる。
--09年3月末のバランスシートを見ると、実質的な現預金を1兆円以上も積み上げています。いったい、何に使うつもりですか。
経済・金融環境の激変を受け、何があっても経営に支障が出ないよう流動性を厚くした。これだけの資金を確保しておけば、将来の成長のためにいい投資案件があった際にも柔軟に動ける。
今年度は全社投資を3600億円(前期実績は5200億円)に減らすと発表していますが、この金額はあくまでベースとなる数字。環境が環境なので投資は厳選するが、本当にいい案件、10年後の物産にとって必要と判断すれば、仕掛けます。単にため込むだけなら、配当で還元しろという話になる。
--実際に資源権益でいい投資案件の話があるのですか。
話の数自体は以前より増えています。しかし、売り手も手放す順番があって、リストの下のほうの権益から売ろうとするので、これはと思うものは少ない。だから、待つのではなくて、こちらから欲しい案件の話をしていけ、と社内では言っている。
資源だけではなく、他の分野もこういう時期だからこそ攻めろ、とハッパをかけている。たとえば、今みたいな経済環境になると、商社には資金援助の要請がいろんな企業から舞い込んでくる。しかし、同じカネを出すのでも、自分たちで業界再編の絵を描いて黒子として仕掛けるのと、困った会社に後ろ向きの資金を出すのとでは意味がまったく違う。