iPhoneロック解除、どっちを支持しますか? アップルと米政府の争点を整理してみた

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Q:厳密には、米政府はアップルに何を求めているのか。

A:政府はアップルに対し、自動削除機能を無効にしたiOSの新バージョンを作るよう求めている。また、新たなOSではパスコード入力を9回間違えたときに最大1時間入力できなくなる機能を回避できるようにすることを要請している。何百万通りものパスワードを試みる「ブルートフォース(総当たり攻撃)」方式によるアイフォーンのロック解除を可能にするためだ。政府は、アップルにはファルーク容疑者が使っていた端末だけで機能するようなソフトウエアを作ることができると主張している。

アップルはどのように反対しているのか

Q:アップルはどのように反対しているのか。

A:アップルは、そのようなツールは実質的に、米連邦捜査局(FBI)、あるいはそれ以外の者がどのアイフォーンにでも侵入できるような「バックドア」を作ることに等しいと主張している。アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は顧客に宛てた書簡のなかで、特別に作られたソフトウエアが「悪者」の手に渡る可能性を指摘し、今回の一件に限って利用されるという考えを否定している。

またクックCEOは、この動きは危険な前例を確立することになるだろうと述べている。「政府はこのようなプライバシー侵害を拡大し、アップルが監視ソフトウエアを開発して、皆さんのメッセージを盗聴し、治療歴や財務データにアクセスし、居場所を追跡し、皆さんが知らない間にアイフォーンのマイクやカメラにさえアクセスするように求めてくるでしょう」と彼は書いている。

Q:ではアップルの言い分が正しいのか。

A:なぜアップルが、特別に作られたソフトウエアが盗まれる、あるいは乱用されることを懸念するのか明確ではない。というのも、開発作業はアップルの研究室で行われ、恐らく、盗まれる可能性は他のアップル製ソフトウエアと変わらないだろう。そして、アップルのセキュリティー管理は強固なことで有名であり、アップルのソースコードや暗号鍵が盗まれたという事件は知られていない。

さらに、同じテクニックはアイフォーン5cの後に発売された端末では使えない。「セキュア・エンクレーブ」と呼ばれるチップを装備しているからだ。このチップはパスコードと製造過程で決まる固有のユーザーIDの双方を使ってデータの暗号化を支援するが、後者のIDについてはアップルにも分からない。

こうした点よりも重大なのが、「前例を作る」という懸念だ。アップルが政府の要請に応じれば、法執行機関からの命令に応じてソフトウエア企業が自社の製品に侵入するツールを作るという最初の例になる。テクノロジー企業とプライバシー擁護派は、米政府だけでなく、他国の政府からも、また民事訴訟における原告からも、似たような要請が際限なく続くのではないかと危惧している。技術者からすれば、セキュリティーを損なうソフトウエアが意図的に作られるという考え自体が恐ろしいことなのだ。

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