上場維持の土俵際 IHI懺悔と再生
過年度決算の大幅訂正で監理ポストへ移されたIHI。大赤字で内部統制の弱さを露呈した。失われた信頼をどう取り戻すか。迷いながらも、釡社長は続投を決断した。(『週刊東洋経済』12月29日-1月5日合併号より)
創業154年の名門が土俵際に立っている。問われているのは、上場企業の「品格」である。
12月14日、IHIは当初予定から1カ月以上遅れ、やっと9月中間決算を発表した。過年度(2006年度決算)と07年度中間期を合わせ、営業利益を776億円も減額修正。株主資本の半分に匹敵する大減額だ。黒字だった06年度は一転、56億円の営業赤字に“改定”された。
07年1月、IHIは公募増資を実施している。“誤った”業績予想と発行目論見書の下、市場から640億円の資金を調達したことになる。東証は12月11日、同社を監理ポストに移し、決算訂正が上場基準に抵触するかどうか、審査を始める。市場関係者の大勢はかろうじて上場は維持されると見ているが、東証が「組織的・悪質で、市場への影響が重大」と判断すれば、上場廃止となる。
大減額修正の原因は、エネルギー・プラント部門の信じられないような“大失策”だった。ボイラー事業では能力の倍もの仕事を抱え込み、あらゆる工程に混乱が「伝染」した。サウジのセメントは2年間もトラブルを引きずった揚げ句、工事の6割をやり直すことになってしまった。
なぜ、こうした未曾有の事態が起きたのか。釡和明社長に聞いた。
--一時は、自らの辞任も考えたとされるが。
伊藤(源嗣会長、12月31日付で辞任)の後、社長に就任し、IHIを成長軌道に乗せるのが私に課せられた役割。その思いに変わりはないが、過年度決算の修正が大きな数字になった。07年1月の公募増資のときも私が財務担当役員。その責任は重い。責任の取り方を考えたのは事実。
ただ、今回明らかになった内部統制などの問題を解決するには、特定事業部門ではなく、私のような(財務出身の)人間のほうが適当ではないか。経営資源を適正・公平に配分するうえでも、私のような人間がいい。妥当かどうかわからないが、続投しながらの責任表明として、ああいう形(6カ月無給)をとった。
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