再出発する製紙業界中位、特種東海が命運託す「カーボンナノペーパー」

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再出発する製紙業界中位、特種東海が命運託す「カーボンナノペーパー」

経営統合から2年、特種東海ホールディングス(以下、特種東海HD)がようやく一歩前進する。そもそもこの統合、王子製紙による北越製紙へのTOBなど、企業買収への危機感が高まっていた中、「まずは統合ありき」でスタートした。最初に、どうシナジーを上げていくかの見通しが提示されず、「業界8位と10位の統合で、結局8位のまま」「事業内容が違いすぎ、拙速では」と疑問視する声が出ていた。

確かに、多品種少量生産型の特種製紙と、原紙から段ボールまで一貫生産する大量生産型の東海パルプでは、事業そのものでのシナジーは生まれにくい。原料一つとっても、古紙100%の段ボールと、基本的に古紙を使わない特殊機能紙では資材の共通化も難しい。しかも、赤字の家庭紙を抱えていた東海パルプは身動きが取れない。

「第一段階の不採算事業テコ入れはほぼ完了」

そうした中で、まず傘下企業の工場閉鎖、設備移転を含む再構築に着手。ファンシーペーパーや段ボールラインの統合、50名の希望退職を実施するなど、リストラに勢力を集中し、不採算事業のテコ入れを含め「2年で統合の第一段階はほぼ完了した」(三澤清利・特種東海HD社長)。そして2010年4月、特種製紙、東海パルプ両社の吸収をもって、懸案の管理部門の統合にもようやくこぎつけることができる。

後ろ向きの作業を終え、2周遅れでやっと立てたスタート地点。本番はここからだ。いかに統合効果を上げ、存在価値を高めていけるか。その解の一つが、特殊紙事業だ。

特種製紙は、社名のとおり特殊紙専門メーカーで、銀行の預金残高通知などに使われる圧着はがきや有価証券の偽造防止用紙など、先駆的な開発商品を数多く抱える。製紙不況の中でも開発費は削減せず、むしろ積極的に若手の発案を取り入れ、開発案件は常時100件以上。「5件当たればまずまず」(松田裕司・営業開発本部長)という鷹揚さに開発志向の特質がのぞく。東海パルプにも特殊紙部門はあるが、これまで互いにわれ関せずの関係だった。それが、開発部隊も来春統合となり、やっと総合力を発揮できる体制が整う。

この開発部隊が最も力を注ぐのが、カーボンナノチューブを抄(す)き込んだ紙「カーボンナノペーパー」だ。


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