「鉄道文字」の奥深い世界を知っていますか JRの中に今も「国鉄書体」が息づいていた

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――明朝体は視認性がよくないのでは?

明朝体は縦線が太くて横線が細い。本や新聞で読むと生理的に読みやすい文字だと言われています。逆に、ディスプレーなどでパッと見ると、縦横の太さの違いがネックになって、可読性や視認性は乏しいという位置付けです。

そうは言いつつも、明朝体風にデザインされた書体を駅名に使った路線もあります。ゴシック以前の文字、つまり人々が長い間記憶している文字という意味では、明朝体という選択肢があってもいいと思います。

書体には「意図」と「理念」がある

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すみ丸ゴシックはJR東海の「スミ丸ゴシック体」として継承された。LED表示でも使われている

国鉄が30年間、すみ丸ゴシックをずっと使ってきて、たとえ、その名前は知らなくとも、「あれは駅の文字だ」とみんなが記憶にとどめている。

「鉄道の安心、安全を印象として与える文字として、長く使われてきた文字を残したい」と、須田さんはおっしゃっていました。決して「格好いい」「昔はよかった」という意味ではなく、鉄道本来の役割を念頭に置いたうえでの選択なのです。

近代鉄道100年にわたる手書きのロマン。駅名標・車輛標記・ナンバープレート、鉄道文字の源流をたどる(本の画像をクリックするとアマゾンのサイトに飛びます)

たとえば、JR東海・名古屋駅の在来線ホームにある吊り下げ式の乗車位置票は今風のフルカラーLED表示ですが、そこにも実はすみ丸ゴシックが使われています。「しらさぎ」の「さ」、「ひだ」の「ひ」にひらがなのウネリやハネといった筆書きの面影が残っています。

「見やすくなった」という利用者からの投書も届いているそうです。利用者に見やすく読みやすい文字を表示するという、サインの使命を果たしているものと思います。

――高速道路の標識の文字も特徴的ですよね。

スピードを出して走っていても、パッと見てそれが何かを読み取りやすい形に特化していった文字だと思います。書体には意図があり、理念がある。高速道路の標識の文字は、みんなが安全に走行できるためのフォルムです。鉄道文字も同じです。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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