「鉄道文字」の奥深い世界を知っていますか JRの中に今も「国鉄書体」が息づいていた
――戦前の駅の文字は手書きが多かったようですね。現在のようなゴシック体になったのはどうしてでしょう。
戦後になっても、しばらくは楷書体、いわゆる筆文字でした。けれども、現地の職人さんが書くので、手書きだとどうしても駅によって文字がバラバラになってしまいます。誰でも同じ字の形で書けるようにしようということで、1954年に国鉄が「丸ゴシック体」という書体を導入しました。
丸ゴシックは普通のゴシックのようにカチッとした文字になるはずでしたが、意外に柔らかい文字になってしまった。看板屋さんの書き慣れた文字のような感じです。職人さんの腕前によって、文字がバラバラになってしまう。
増殖していった鉄道文字の歴史
――文字を統一するつもりで導入したのに、統一されなかったということですね。
そうです。国鉄が意図したこととは違う方向に、この書体が走り出してしまった。それで「どうにかしなくてはいけない」ということもあって、1960年に「すみ丸角ゴシック体」(以下、すみ丸ゴシック)という書体ができました。
これは、いわゆる「ゴシック体」を元に、線の隅(すみ)の部分の角を取って丸くしたものです。角を取ったほうが職人さんは書きやすい。筆で角の鋭角を出すのは難しいのです。
その後、営団のゴシック4550のような鉄道のための文字が、ほかにも生まれました。国鉄自身も後に、すみ丸ゴシックをブラッシュアップし、「JNR-L」という写植書体を1982年に作りました。東北・上越新幹線の開業に合わせて展開するという意図でしたが、在来線にも広がりました。
――JRになってからはどうなりましたか。
JR東海が国鉄のすみ丸ゴシックを引き継ぎました。同社は「スミ丸ゴシック体」と呼んでいます。JR東日本やJR九州は新ゴを使っています。
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