新設相次ぐ有力私大付属、大学合格実績で存在感示すが、ブランド力の見極めも必要《本当に強い中高一貫校》
大学は、早稲田摂陵にも早稲田中高のような系属校となることを期待した。しかし、系属化したからといって、いきなりトップ進学校になれるはずもない。限定的推薦枠や校名変更が裏目に出て、逆に入学者の大幅な落ち込みにつながってしまった。
危機感を抱いた早稲田は即座に、教育学部長を務めた経験もある藁谷友紀・常任理事を立て直しのため、校長として送り込んだ。今春の入試結果について藁谷校長は「摂陵から早稲田摂陵になって学校がどう変わるのか、を明確にすることを怠り、受験生や保護者らに理解を得られなかった。大学として反省している」と失敗を率直に認める。
今、早稲田摂陵は来年度入試に向けた改革に躍起だ。当初から計画されていた男女共学化を来年に実施。寮を整備して、全国型入試を展開する。また、国際校カラーを前面に出す戦略で、スイスの有名インターナショナル・スクールへの留学制度を整備。早稲田大が委託を受けている科学技術振興機構(JST)の未来の科学者養成事業に早稲田摂陵の生徒を参加させるなど、早稲田の研究・教育資源を活用してテコ入れする。地域の学校という従来の摂陵の長所を生かしながら、早稲田摂陵という新たなカラーを押し出す方針だ。藁谷校長は「早稲田摂陵を軌道に乗せるには、この半年、1年が勝負」と表情を引き締める。
創立者・大隈重信の生誕地、佐賀県に来年新設される早稲田佐賀中学・高校。注目の推薦枠は募集定員(中学・高校各120人)の50%となっている。全入にはなっておらず、やはり早稲田中高型の国公立への進学と早稲田大の内部進学の両面を持つ中高一貫校を目指す。特に、地元の九州は国公立志向が強いことから、国公立大受験にも力を入れる方針だ。半数を国公立大に送り、50%の内部推薦枠で対応すると見込む。
とはいえ、早稲田摂陵ショックがあったばかり。内部進学枠の割合が高くても、新設でいきなりトップ進学校になることには困難も予想される。しかし「最初から、生徒は集まると見ている」と、地元・佐賀県の県立高校長から早稲田佐賀の校長に就任する溝上芳秋氏は強気だ。
その裏付けの一つが、全国型入試の展開だ。7、8月に全国で行う学校説明会は、北は北海道から南は沖縄まで19の都道府県で開催。市内の学校近くには、開校時の生徒240人の6割に当たる130人以上が入居できる寮を完備する。全国、さらに海外赴任者が外国から問い合わせをしてきているという。