優れた上司は、部下の「尖った部分」を活かす 人の個性を削ると、後には何も残らない
したがって、いまがどういう局面なのか(上げ相場なのか、下げ相場なのか)を察知し、局面に応じて「任せる担当者を変えていく」のが社長(上司)の仕事といえます。
しかし、日本の企業の人材育成は、「得意なことをどんどん伸ばす」よりも「不得意なことをなくす」ことに傾いている気がします。
人材配置は「損得」で考えて「実利」を得る
たとえば、ハーバード大学のロースクールで法律を学んだ社員に向かって、「地道な苦労もしたほうがいいから、営業を一から経験してこい」「アメリカかぶれになっていないで、田舎の実情を見てこい」などと、不毛な精神論を振りかざしたりします。
グローバル企業であれば、このような対応はしません。この社員がすぐに成果を上げられるような人事をします。
「キミ、まだ年齢は若いけれど、法律を専門的に勉強してきたのだから、法務部の次長に抜擢するよ。会社のコンプライアンス体制をつくってほしい」と、実利や、損得を考えた人材配置をするはずです。
仕事を任せるときはやはり「不得意なことではなく、得意なことを任せる」ほうが実利は得られます。そして、その人の不得意なところは、「強制的にできるようにさせる」のではなくて、ファンドマネジャーの例のように、「別の人」をあてがって、補えばいいのです。
さらにいえば、このようにして部下に仕事を任せるときに気をつけたいのは、「人は100%の力で働くことはできない」ということです。
ライフネット生命保険の開業前に、日本生命時代の大先輩から、社長になるための心構えを聞かれ、僕は、「優秀な社員が集まったので、みんなに100%の力を発揮してもらって、いい会社にしたいと思います」と答えました。
すると先輩は、「100の力で働いたら、すぐ疲れてしまうだろう」と、僕をたしなめました。「人間は、普段は30か40の力で働いているのだから、50で働けば十分。だからはじめは、みんなが50くらいで働いて、少しずつ時間をかけて、50を55に、55を60にしようと考えるのが経営者だ。いきなり社員に100%の力を発揮してもらおうなんて思ってはアカン」
当時の僕は、人間と社会のリアルな関係を見切れていなかったのです。人間は元来、怠け者です。そのことを受け入れたうえで、「誰に、どんな仕事を任せたらいいか」を考えるのが、上司の仕事なのです。
最後にチームを機能させるためのポイントをまとめると、
さまざまな形を組み合わせるからこそ、組織は強くなる。
上司は部下に「向いている仕事」を任せたほうが成果は望める。
ということになります。みなさんの参考になりましたら幸いです。
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