優れた上司は、部下の「尖った部分」を活かす 人の個性を削ると、後には何も残らない
組織も同じです。仕事は一人ではなく、チームでするものです。形はさまざまでも、組み合わせることで強い石垣がつくれればいいのです。組み合わせたとき、隙間ができてしまうのなら、「小さな石」を入れて、埋めたり、つないだりすればいい。
その「小さな石」こそ、上司(マネジャー)の役割です。
部下の個性を無理に変えるより、個性を生かし、特長を組み合わせながら仕事をする。みんなを同じ形に整えてしまうと、個性も、強さも、失われてしまう。
ルーチンが好きな人を、マネジャーにする必要はない
上司と部下の関係は、「任せ、任される」のが理想ですが、部下の中には、「仕事を任されたくない」と感じる人もいます。
すべての社員が管理職になるわけでも、なりたいわけでもありません。部下の価値観を無視して、上司の価値観を押し付けるのは、一種のパワーハラスメントです。
会社の業務の大半は、ルーチンワークと言えます。単純な事務作業をミスなくスピーディに行う人も、会社にとって大切な存在です。
「責任の大きな仕事より、ルーチンワークで力を発揮したい」人には、マネジャーレベルの責任の大きな仕事を任せてはいけないのです。
「人には、得意・不得意がある」ことがわかっていない上司は、「頑張って努力を続ければ、必ず苦手を克服できる」と考えがちです。ですが僕は、この考え方に反対です。
人は「得意なもの」を伸ばしていくべきです。そして、みんなが「得意なもの」を伸ばしてチームをつくるのが、もっとも合理的です。極論すれば、苦手は、克服しない。苦手なものは、誰かに補ってもらう。誰かに教えてもらう。チームは、そのためにあるのです。
僕がアメリカで、投資顧問業界のあり方を調査しているとき、「ファンドマネジャー(投資顧問会社の資産運用の担当者)」の育成に関して、とても興味深い話を聞きました。
話をうかがったA社の社長は、「どんな局面でも乗り切れるような、万能タイプのファンドマネジャーを育てるつもりはない」という考え方を持っていたのです。
人には「向き・不向き」があります。攻めが得意な人は守りが苦手で、守りが得意な人は攻めが苦手なものです。「万能な人材」など、いないのです。
だとしたら、攻めが得意な人は攻めを、守りが得意な人は守りを極めればいいのであって、「攻めが得意な人に守りを覚えさせたり、守りが得意な人に攻め方を教えたりする必要はない」と、A社の社長は言い切ったのです。
「三つ子の魂百まで」と言われるように、人の性格は、そう簡単には変わりません。弱気な人に「もっと強くなってこい」と時間をかけて修練を積ませても、大きな変化は期待できません。だとしたら、その人に「向いている仕事」を任せたほうが成果は望めます。
だから、上げ相場のときには強気のファンドマネジャーを、下げ相場のときには慎重なファンドマネジャーを起用する。一人のファンドマネジャーに、上げ相場も下げ相場も任せるのではなく、2人を組み合わせながら、任せればいいわけです。
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