外資系証券マンが抱える婚活の深い悩み 東京の「婚活事情」最前線<6>
「でも、俺まじ金ないんだよね。だから貯金しないとそもそも結婚式もできねー」
この若さでこの収入を稼ぐ者はかなり少ないと思われるが、哲哉の目下の悩みは金欠だという。
「だってさ、年収1000万越えたって、ボーナスもあるし月に手取り100万なんて全然ないじゃん? で、家賃とかいろいろ払ったら使えるの40万ないだろ。1回飲み行ったら最低2、3万じゃん。基本赤字だよ。俺去年カード年間で1000万使ってたし」
「見栄に金が消えていく」
随分たまげたことを言うが、これもまた外銀あるあるのひとつであるらしい。
「飲みは付き合いだから仕方ねぇじゃん。あと女たちのタクシー代だの、メシ連れてくのもあいつらウルセーからいい店行くだろ。スーツとか時計も安いやつ着けられねぇし」
自分で稼いだ金なのだから用途は至って自由であるが、都会のエリートは稼いだ分また出費も多いのだという。金を手にした分だけ生活の質も上がる。それなりのステイタスでいるための必要経費。そうやって経済は成り立っているのだろう。
「まじ金ねぇよ。見栄に金が消えてくんだよ」
もう酔いが回っているようだ。タバコに火を付けながら、本気のしかめ面で口をとがらせている。今日の飲み会相手CAなんだけど、結婚したいオーラが超出てて嫌いなんだよ。
まだ若い哲哉は、今後男としてどう成長していくのだろう。この男はこれから30代にかけて、さらに男の色気を身に着け、年収も青天井に上がっていくのだ。
良くも悪くも、今の哲哉はまだ若く幼く、そして何よりも素直だ。そしてその素直さを世間に許されてしまう才能を持って生まれてきた。
「今日は飲み会。相手CAらしいんだけど、あいつら結婚したいオーラ超出てて、俺嫌いなんだよな。まぁ先輩の誘いだから、適当に行って来るよ」
この軽快な無邪気さで、いつまで自堕落なプライベート生活を送るのだろう。別に否定も批判もするつもりはない。それができる人間だって限られているからだ。言ってしまえば、むしろ世間は、顔も収入も良い男が、さらに誠実な性格で適齢期に同じように顔も心も美しい女と結婚し子どもを持ち、夫婦円満、家庭円満なんてつまらないストーリーは望んでいない。
哲哉と関わる女からすれば、スペックは良いが誰も独占することのできない、どうしようもなく調子に乗った男として割り切っておく方が、変に魅了され淡い期待を抱き傷つくこともなく、心は平穏でいられる。チャラ男でいてくれた方が都合がよいのだ。哲哉に手を出されうっかり本気になった女たちを一段上から「すぐに捨てられる」と意地の悪い心で嗤い見下すこともできる。