デジタルサイネージ、屋外で変幻自在の新世代広告《広告サバイバル》 

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未来の1兆円市場に期待を寄せるのは、薄型テレビ向け液晶パネルの供給過剰に悩む電機メーカーも同じだ。パナソニック、シャープなどは軒並みデジタルサイネージ向けの液晶を商品化し、専門部署も設けた。

中でもソニーは、液晶を利用して食品スーパー向けの広告ビジネスそのものにも参入した。ソニーが費用を負担し、スーパーに機器を置かせてもらう。画面では、ソニーが制作した料理番組の間に食品メーカーなどのCMが流れる。CMは広告代理店を通じて出稿されるが、ソニーはグループ内に広告代理店を持っており、そこも活用する。いなげや、オリンピックの店舗に設置され、店側もCM料金の一部を受け取る。

富士通やNECも実証実験を続ける。とりわけ富士通は、カメラで人の顔を写し年齢・性別を判断する顔認識技術や音声認識技術を利用し、個々人に即した広告配信を提案するなど、独自の手法を売り込む。実現すれば「ビール」と画面の前でしゃべるとビールの広告が出てくるなど、より効果の高い広告が可能だ。

ただしソニーや富士通などは初期投資の重さからみな赤字。「液晶やブロードバンドの価格下落で参入障壁が低すぎて、競合も激しい」(ソニーの齋藤仁サイネージビジネス部統括部長)。さらに広告不況も直撃し、黒字化には時間がかかりそうだ。

「前略、CMで麦とホップのうまさを伝えるのには限界がありますので、CM制作予算を試飲キャンペーンに回させていただきます」。今春、ユニークな文句でお茶の間を引き付けたサッポロビールの第3のビール「麦とホップ」のCM。広告費自体は維持しながらも実際にCM制作費用を安く抑え、浮いた予算を試飲キャンペーンに回した。「テレビCMは商品認知力で圧倒的だが、認知=購買行動ではない。より購買の現場に近いスーパー、野球場、電車内などの屋外広告や試飲に注目している」(嵯峨山真・サッポロブランド戦略部宣伝室長)と、デジタルサイネージにも積極的だ。

とはいえ、本格普及には課題も多い。通信方式が各社まちまちで、異なった機器での一斉配信ができない、視聴率のような効果測定の標準指標がないなどの課題も多い。標準化の動きもあるが、ある関係者は「過去の投資を回収したいメーカーと標準化を望む広告主、さらに単価が低いデジタルサイネージに消極的な代理店と利害がかみ合わず、動きは鈍い」と言う。

さまざまな業界の思惑を抱えつつ拡大するデジタルサイネージ市場。広告主にとって魅力的な選択肢となれるかが本格普及のカギだ。

(週刊東洋経済)

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