デジタルサイネージ、屋外で変幻自在の新世代広告《広告サバイバル》
広告不況下でも独り勝ち 満稿続くトレインチャンネル
デジタルサイネージが広告媒体として注目されるきっかけは、02年に導入されたトレインチャンネルの成功だ。JR車内のドア上に設置された液晶テレビで、首都圏の電車通勤者には今やおなじみである。
電車内は閉鎖空間のため視認率が高く、若年層が多いことがウリ。無音でのCMは定着しないとの見方が大半だったが、今ではパナソニックや任天堂、日本コカ・コーラなどの大手が出稿する人気媒体に成長。「大音量で関心を引くのが屋外媒体の命」という常識を打ち破った。
山手線、中央線、京浜東北線の全車両で1週間流しても360万円から、という低価格も魅力だ。トレインチャンネルを手掛けるJR東日本企画によると、売上高は毎年約10%増。広告不況の現在でも「前年比プラスでほぼ満稿状態」(山本孝・交通媒体本部媒体開発部部長)という。
トレインチャンネルに続けとばかりに、普及推進業界団体のデジタルサイネージコンソーシアムは約150社が加盟する。通信、電機、放送会社など多彩な顔ぶれが並ぶほか、ベンチャー企業も多数存在する。
その筆頭格が04年に設立された日本カーライフアシストだ。利用者の約9割が10~20代の若者という自動車教習所の特性に目をつけ、全国340カ所以上の教習所に専用の液晶テレビを無償で設置。5~10分の番組の間に挟んだCMが収益源だ。大手の出稿も多く「若者向け車種の多いスズキ、マツダは特に積極的」(平間研司社長)。売上高は50%増が続き08年度は3億5000万円。昨年末には黒字化も達成した。ディーラーと協力して若者向け展示車を教習所内に置くなど、CM配信との相乗効果も狙う。