私も、ときとしてメディアから誘導尋問的なインタビューを受けることがある。「今年は暖冬だったから、利益率が悪化した」とコメントさせたいとしか思えない質問が投げかけられる。もちろん気温は消費者の気持ちを左右させる。ただし、気温というのはひとつのファクターにすぎない。人気商品の不発もあるだろうし、逆に地道な努力で販売増に導くこともあるだろう。
気温だけにA級戦犯を背負わせてしまってよいのだろうか。
ユニクロ決算と気温の関係
過去のユニクロを振り返って、気温と業績にどんな関係があるか見てみよう。
気象庁のホームページから「過去の地域平均気象データ検索」ができる。そこから、東日本と西日本における気温の「平年差」を入手できる。平年差とは、簡単にいうと、これまで観測した平均値とくらべて特定年の平均気温がどれくらい高かったか、あるいは低かったかを示すものだ。それとユニクロ(ファーストリテイリング)の売上高営業利益率を比べてみた。
営業利益にしようか経常利益にしようか悩んだが、本業の儲けを示す営業利益が今回の趣旨にはふさわしいと考えた。
気象庁は3カ月ごとの平年差も出してくれている。そこでもっとも寒い、12~2月の気温が利益にどう影響するかを調べてみよう。ユニクロ(ファーストリテイリング)は上場企業のため、四半期決算を発表している。真冬に当たり、同社の第2四半期となる12~2月の業績との関係を見てみた。
縦軸に平年差、横軸に各年の営業利益率を置いたグラフをつくってみた。仮説が正しければ、暖冬ほど営業利益率は低く、厳冬ほど営業利益率は高くなる、つまりグラフは右肩下がりに見えるはずだ。
まず東日本の12~2月の平年差と営業利益率の関係を見てみたところ、そこには相関性がないように感じられる。統計では決定係数とよび、1に近づくほど、二つの項目は高い相関性をもつ。サンプル数は少ないものの、ファーストリテイリングにおける平年差と営業利益率に関して、決定係数は0.002にすぎない。
これらは西日本で見ても同様の結果だ。
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