国際ビジネスブレイン代表取締役・新将命(Part2)--勝ち残る企業は、勝ち残るための経営原則をきちっと守っている

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--社長で成功する人としない人の分かれ道はありますか。

先日の新聞に「ジョンソン・エンド・ジョンソン76年連続増収、46年連続増配達成」という記事があり、現役のCEOは「原則にこだわることで難局を乗り越えた」とコメントしています。経営の神様である松下幸之助さんも、「成功する会社はなぜ成功するのか。成功するようにやっているからだ。失敗する会社はなぜ失敗しているのか。失敗するようにやっているからだ」とおっしゃいました。

勝ち残る企業は、勝ち残るための経営原則をきちっと守っているんです。原則は3つあります。1つめは、企業理念の確立と浸透。2つめは、理念に基づいた戦略の確立と浸透。3つめは、人材育成です。

業種業界は関係なく、企業経営の根幹は80%がこの3原則で決まります。20%は変動要素である商品や商習慣の違いですが、半年から1年もあれば勉強できますからね。原則に従って経営できる人がリーダーであり社長です。できない人は、名ばかり社長やマネージャーにすぎません。

--松下幸之助さんは、「社長は経営理念の伝道師」ともおっしゃっています。企業取材の経験上、社員が自社の存在理由を言えない会社は、消えるか業績悪化、買収される道をたどるように思います。社長として、どのように理念を伝道されていましたか。

年次総会などの公式の場で、話の冒頭と最後に盛り込んで頻繁に語っていました。連絡会議や部長会など非公式の場でも話しましたね。

現代は価値観が多様化しているので、放っておけば組織は空中分解してしまいます。わが社にとって何が大事かという企業理念が、錦の御旗として求心力となります。たとえば、製造と営業には対立が多いものですが、企業理念に立ち返れば、非生産的な対立や軋轢は限りなくゼロに近づけることができます。お経のような唱え文句ではなく、仕事上のツールとして社長が率先して使っていくと、2~3年で会社の雰囲気が変わりますよ。

--理念は憲法のようなものですよね。簡単に企業理念を変えて新事業をやると、「なぜあんな事業に手を出すのか」と社員や金融機関が離れていく場合さえあります。

おっしゃるとおりです。ただ、戦後、日本以外は時代の流れとともに憲法を変えていますよね。ジョンソン・エンド・ジョンソンには「我が信条」という企業理念がありますが、「社員が家族に対する責任を十分に果たすことができるよう、配慮しなければならない」というのは後から付け加えられたものです。「神の御加護のもとに」という文言は削除されました。頻繁には変えませんが、社会が変われば理念も変えていいと思います。

(写真:今井康一)

あたらし・まさみ
 1936年東京生まれ。早稲田大学卒業後、シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスを含むグローバル・エクセレント・カンパニー6社で40数年にわたり社長職を3社、副社長職を1社経験。2003年より住友商事を含む数社のアドバイザリー・ボードメンバーを務める。長年の経験と実績をベースに経営者、経営幹部を対象に経営とリーダーシップに関する講演・セミナーを通じて国内外で「リーダー人財開発」の使命に取り組んでいる。また“エグゼクティブ・メンター”として経営者・経営者グループに対する経営指導・相談の役割を果たしている。実質的内容の希薄な虚論や空論とは異なり、実際に役に立つ“実論“の提唱を眼目とした、独特の経営論・リーダーシップ論には定評がある。著書・CD教材多数。近著『伝説の外資トップが説く リーダーの教科書』(ランダムハウス講談社刊)は、悩み多き部課長だけでなく、現役経営者、これからリーダーになる若手ビジネスマンの間でも話題。

■CEOへの道は、エグゼクティブ向けの人材会社・リクルートエグゼクティブエージェント主催のセミナー「Road to CEO」との連動企画です。

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