■CEOへの道は、職業としての”社長”を選び、第一線で活躍するプロによるトークセッション。将来、経営層を目指すオーディエンスに、自らの経験とノウハウを語る。
--ジョンソン・エンド・ジョンソンでの仕事については満足されていますか。
4期8年やりましたが、平均で売上高を12~13%ほどアップさせました。GDPの伸びの3倍は伸ばすことができたので、まあまあではないでしょうか。
ただ、6年以上社長をやるのは間違いだと思っています。誠心誠意コミットメントを持ってやっていると、肉体的にも精神的にも6年やれば精魂尽きます。10年以上も社長をやる人も世の中にいますが、よほど優秀か、よほど手抜き工事をしているかのどちらかですよ(笑)。
私は8年やってしまいましたが、7~8年いると新しい学びがなくなります。真剣勝負は6年ですね。今アドバイザリーボードメンバーである住友商事も、年齢がいくつであろうと3期6年以上はやらないことになっているんですよ。
--70代後半まで社長を続ける方もいらっしゃいますよね。
無能力者ですよね(笑)。世間に向かって自分は「後継者を育てていない」と公言しているようなもの。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの社長に就任した初日、12歳年上のフランク・ディアンジェリ会長がこう言いました。「あなたが社長を辞めるとき、どんなに数字面ですばらしい業績をあげていても、後継者を育てていなければ50点以上は与えられない」。社長の責任の半分は、少なくとも後継者の育成だというわけです。
--就任初日にそんな話があったということは、常に辞めることを前提にされていたと思います。ジョンソン・エンド・ジョンソンの後、国際ビジネスブレインというコンサルタント会社を設立されました。創業したということは、雇われ社長が嫌になったのでしょうか。
4期8年社長をやってそこそこ実績がいいと、立派な社長室が用意され、運転手付きの車や秘書が付き、快適な環境が整うんです。社長室に来る98%の人が、笑顔ともみ手ですり寄ってきます(笑)。人気の理由は、「新 将命という人間の魅力」ではなく、「社長というポジションの魅力」。社長というタイトルを外したときの自分の価値が限りなくわからなくなり、会社を作って企業のアドバイザーや講演、執筆などの活動を始めたというわけです。
--独立後2年で再び社長職に復帰されています。
独立時は自分の本当の価値を試してみたかったんです。運が良かったのもありますが、初年度から社長の時くらいの収入ができて一人でもやっていけることがわかりました。そのうちにサラ・リーやフィリップスから立て直しを頼まれ、4年単位で3社の社長と副社長をやりました。今でも3年あれば会社を立て直すことができると思っています。