「高橋財政」に学び大胆なリフレ政策を--昭和恐慌以上の危機に陥らないために

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第二次高橋財政を発動せよ

とすれば、いまや貨幣ストックを確実に増加させることのできる日銀の国債引き受けという「高橋財政そのもの」を実施すべきではないか。

確かに財政法第5条は日銀の国債直接引き受けを原則として禁止している。しかし、そこには「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない」というただし書きがある。また日銀法第34条第3項では、日銀が国との間で行うことができる業務として、「財政法第5条ただし書の規定による国会の議決を経た金額の範囲内において行う国債の応募又は引受け」が挙げられている。非常時の現在、この規定を利用すればよい。政府は早急に、日銀引き受けによる国債発行を国会に提出すべきだ。

具体的には、まず諸外国で通常行われているように2~3%のインフレ目標を設定する。その達成には1年半から2年程度の期間を設ける。目標値の達成はこの幅の中で達成されればよい。デフレ不況から脱出する「出口戦略」において、ごく短期のインフレ率の上昇に過剰に反応して早期に金融引き締めに走る危険性を防ぐためにも、幅は必要である。

国会は今後1年間の新規国債発行推定額を上限として、日銀による国債引き受け額の上限値を決定する。実際の月々の引き受け額は、普通国債と物価連動国債の利回り差から計算されるブレーク・イーブン・インフレ率(期待インフレ率の代理変数)を見ながら増減させればよい。要するに日銀は独自で国債買い入れオペを行うものの、それは長期国債の引き受け額を前提にしてインフレ目標を達成するように運営すべきことになる。ただし、非常事態を脱して直接引き受けを中止するときには、別途日銀にインフレ目標を課す必要があるだろう。

今年の4~6月期にはプラス成長に転じ、最悪期を脱するという観測があり、白川日銀総裁も5月22日の定例記者会見で楽観的な展望を述べた。しかしそれでも危機発生時点までの回復には程遠く、このまま放置すれば日本経済の危機はますます深刻化する。昭和恐慌は日本経済に破局的な影響をもたらした。それから脱却した高橋財政金融政策の教訓を学ばないならば、われわれは恐慌から脱することはできない。


いわた・きくお
1966年東京大学経済学部卒、同大学院経済学研究科で博士課程修了。上智大学教授などを経て現職。近著に『世界同時不況』など。

わかたべ・まさずみ
1987年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。トロント大学経済学大学院博士課程単位取得。著書に『昭和恐慌の研究』(共著)など。

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