フィギュア王国になれない日本のアキレス腱 カップル競技を取り巻く環境はとても厳しい
競技人口が少ないので複数組で滑る機会はまれだし、ペア競技はスペースが必要で危険を伴うため、通常営業時間内に実質的な練習はできない。すると貸し切りにするしかないが、平均的に1時間3万円の費用がかかる。補助が出るようなトップ選手ではない、ジュニア選手の費用としては非常に高額になる。そのため、海外を拠点にすることを決断するケースもあるが、その場合、リンク代は安くても滞在費がかかり、結果的にはそちらのほうが高額になるケースもある。
さらにアイスダンスにおいては、社交ダンスのレッスン代なども加算される。当然2人で滑るため、費用は折半の部分もあるが、ここで浮上するのが、両者(両家)の財力の差。1人が海外でのトレーニングを希望しても、もう1人が財政面で厳しいとなると、渡航は困難になる。シングルに比べて投資額が大きいカップル競技への理解があり、財力も備える家庭が2つそろうのか。現実的に考えて難しいのが現状だ。
経験者が少ないため指導者も不足
2つめの指導者の問題。スケート王国に比べてリンクの数がとても少ないこともあり、日本ではカップル競技の経験者が圧倒的に少ない。必然、指導者の少なさにも直結する。日本の名だたる指導者はシングル競技出身が主。最初からカップル競技を目指す選手はほとんどいないからだ。
連盟では改善策として月に1度のペースで指導者への講習会なども行っているが、そう簡単に芽は出ない。そこで海外に指導者を求めることになるが、ここでも費用問題が発生し、やむなく競技を断念する場合もある。トライアウトで裾野を広げようにも、育つ土壌がないのが現状だ。
ソチ五輪で団体戦が正式採用されたことで、「始めからカップル競技をやろうとする選手は増えてきている」(小林強化部長)という感触はある。ただ、それは爆発的に競技人口の増加につながるとは言えない。ソチ五輪に出場したペアの高橋成美・木原龍一組は解散、アイスダンスのリード姉弟組も姉キャシーの引退に伴い、弟クリスは村元哉中と新コンビを結成したばかり。世界で戦えるかと問われれば、ソチ前よりも後退していると言わざるを得ない。
「片目をつぶれない」カップル事情が出てくるほど選手層がない日本は、その前段階にある。「フィギュア王国」に向けた障壁は山積みで、その道のりは険しい。世界の檜舞台で堂々と渡り合うようなペア、アイスダンスの選手たちが登場するには、まだしばらくの時が必要となりそうだ。
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