池田・泉州銀行の統合で、メガバンク“退出”の理由

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池田・泉州銀行の統合で、メガバンク“退出”の理由

公然と「破談」もささやかれ、関西金融界で成り行きが危ぶまれていた池田銀行と泉州銀行の統合。5月25日に契約を締結したが、その内容が波紋を呼んでいる。

今年10月の経営統合後、「池田泉州ホールディングス」(池田泉州HD)に対する三菱東京UFJ銀行(BTMU)の株式持分比率は約36%になる。しかし今回、「地域金融機関としての経営の独立性を高めるため」(発表資料)、統合後にBTMUが株式の処分を進め、2012年9月末までに15%未満にすると公表された。

従来、泉州銀はBTMUの子会社(3月末持ち株比率67%)で、株放出は関西地区での“拠点消失”ともいえる。一方、08年3月には池田銀の優先株300億円を引き受けているが、これも親密銀行支援との意味を喪失しよう。

池田銀と泉州銀の協議はもめにもめ、最終契約の締結が当初予定より半年も遅れた。この背景には統合比率や資産査定、そして経営の独立性維持へのこだわりがあった。

池田銀では今年3月、主要取引先を中心に優先株250億円の第三者増資を実施している。引受先は大林組系ノンバンク、ダイキン工業を筆頭にそうそうたる顔ぶれ。有価証券の関連損失や与信費用増加から池田銀は07年度549億円、08年度も374億円の連結純損失を計上し、増資は必要不可欠だった。関係者は「服部頭取はBTMU側に追加出資を求めたが、役員派遣や子会社化などを柱とした条件を提示された。到底のめるものではなく、自力調達に方針を転換した」と話す。BTMU関係者は「まず増資はできないだろうと高をくくっていたが、まさか本当にカネが集まるとは」と振り返る。

一方、泉州銀の吉田憲正頭取は旧三和銀行出身で、同行の監査役を除く役員8人のうち、旧三和出身者が過半を占める。統合話が持ち上がる以前から、BTMUとの距離感が指摘され、独立志向も強かったとされる。

「金融庁の再編圧力の下、BTMUが一歩退くことで話をまとめた」というのが、周辺関係者の一致した見方だ。畔柳信雄BTMU会長の社外取締役就任も「形を整えただけ」(関係者)に映る。経営の独立性を維持した統合だが、両行の融合を不安視する見方は根強く残っている。

(石川正樹 =『金融ビジネス』編集部)

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