沈黙は金? 業績予想制度の危機、増える「予想非開示」
内部統制ルールも「非開示」を後押し
冒頭のトヨタだが、今期営業赤字8500億円の的中可能性について、市場は懐疑的だ。というのも、トヨタは6月の株主総会で、創業家の豊田章男副社長が社長に就任する“大政奉還”の年。大切な創業家社長に期中の下方修正で恥をかかせぬよう、最悪の数字を積み重ねた悲観的な予想だというのだが……。
予想の精度や当否はともかく、これまで会社側が提示する数字がマーケットでの議論のたたき台になっていたことは間違いない。また、直近予想に比べて売上高で1割、経常利益や純利益で3割の変動時に業績予想修正を公表するよう義務づけられているが、そもそも予想が非公表なら、どんなに事業環境が悪化しても開示ルールに引っ掛からない。これでは「沈黙は金」だ。
さらに、会社法の適用開始で内部統制ルールの明確化が求められるようになった。時に鉛筆をなめ、時に銀行や取引先の顔色をうかがいながら数字を作ってきたが、今回からは予想を固めて発表するまでのプロセス全体が記録の対象になる。「業績予想非開示」の誘惑は増すばかりだ。
欧米では、業績予想は企業の仕事ではなく、アナリストやメディアが予想にしのぎを削っている。今後、日本でも外部者の手による予想が主流になる可能性がある。手前みそではあるが、会社見解との相違も辞さずに独自予想を示してきた東洋経済の『会社四季報』の出番が増えるのかもしれない。
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