パイオニアまで救うのか? 問題山積の公的資金による資本増強
メーカーでは、パイオニア以外には半導体メモリ大手のエルピーダメモリ、ルネサステクノロジとNECエレクトロニクスが統合して誕生する新半導体会社(10年春発足予定)が同制度の申請検討を明らかにしている。
エルピーダは台湾合弁などへの巨額投資と半導体市況の悪化で、04年の上場以来、最終黒字が計上できたのはわずか2期。03年に発足したルネサスも母体である日立製作所、三菱電機の文化融合に時間がかかり業績低迷に苦しみっぱなし。NECエレは過去4期連続で最終赤字を計上しているうえ、パイオニア同様、ファンドの出資と再生計画を固辞してきた企業だ。NECにエレ株の買い取りと抜本的な事業テコ入れを提言し、拒否され続けてきた米投資ファンドの関係者は冷笑して言う。「外資のカネは受け入れず、国のカネなら欲しいと言う。日本は本当に変わった国ですね。あなたたち日本の納税者はそれで満足なのですか」。
公的資金による半導体産業再編の成功は困難、との指摘もある。元経産省官僚で米投資ファンド・シルバーレイクのシニアアドバイザーを務める福田秀敬氏は、かつてルネサスや富士通を巻き込んだ半導体共同工場計画にかかわった経験からこう語る。「共同工場計画では必要となる資本の過半を外資ファンドから調達する予定だった。民間が出資に見合うと判断しない企業やプランは、そもそも経済合理性がない」。当時は複数の外資ファンドが出資に前向きだったが、参加企業の不協和音で国策の共同工場は実現しなかった。
多くの矛盾を抱えたままの公的資金注入。健全な競争原理や財政の公平な配分からは懸け離れ、瀕死の企業をゾンビのように延命させうる異例な政策が今、発動されようとしている。
(週刊東洋経済)
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