広告代理店が高級ブランドに熱を上げるワケ ネットメディアが利益は二の次で熱視線
セイム・セイム・バット・ディッファレントは2015年末に電通イージス傘下のクリエーティブ系グローバル代理店のマクギャリー・ボウエン(McGarryBowen)に買収されていて、自身の社名もマクギャリー・ボウエン・ラグジュアリーに変更した。そして、カムパン氏は「別の業界から参入してきて、成功することは不可能だ」と続ける。
だからこそ、このようなM&Aによる合併と買収が行われているのだ。
高級ブランドに群れる代理店
しかし、こうした合併や買収は、利益のために実施されているわけではない。複数のエージェンシーのコンサルタントによると、小売業やラグジュアリー産業以外のビジネスのマージン率は約13%から15%だというが、ラグジュアリー産業のマージン率は約10%から12%と、むしろ低い。また、ラグジュアリー産業のマーケティング予算は少ない。広告費にはそれなりの費用をかけているが、ほかの業界と比べるとやはり予算が少ないのだ。
とあるエージェンシーの役員は、これを「群れる心理」と呼んでいる。もしひとつのエージェンシーがラグジュアリーブランドを担当することとなると、ほかのエージェンシーでも同様にラグジュアリーブランドを担当したがるようになり、連鎖がはじまるということだ。
最終的には全員が同じ顧客を巡って競争をはじめる悪循環に陥る。この役員によると、ラグジュアリーブランドは一般企業と別次元にいて、競合するケースは滅多にないという。
待ち受ける高いハードル
また、別の問題として、ラグジュアリーブランドを顧客とするのはとても難しいことが挙げられる。多くの場合、ラグジュアリーブランドの社内には商品やマーケティングを入念に確認している部署が存在するためだ。
「トリーバーチとP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)では、それぞれエージェンシーに望むものがまったく異なる」と、グレーデ氏はコメントする。一方でカムパン氏は、彼のクライアントたちはエージェンシーのスタッフを重要視すると話す。エージェンシーのネームバリューではなく、人材の質を優先しているというのだ。
ラグジュアリーブランド業界はいま、デジタル技術の進歩により業界全体が盛り上がっている。ラグジュアリーブランドはeコマース企業やデザインエージェンシーとは積極的に仕事をしてきたが、マーケティングは社内で行ってきた。
デジタル活用が進む高級ブランド
しかし、この6年で多くのことが変わってきた。バーバリー(Burberry)のようなブランドたちが、eコマースやデザインエージェンシーを社内に統合させ、これまでのビジネスモデルを変えたためである。このことにより、エージェンシーによる総合的なサービス提供を要望する声が多く挙がり、従来の広告代理店が参入するようになった。