日立、「復活のキーマン」がCEOを譲った理由 復活後の調整局面をどう乗り切るのか

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2010年からは川村氏が会長に、中西氏が社長に就任し、倒産の危機といわれながら2013年度にはV字回復を遂げ、23年ぶりとなる過去最高益を更新した。その立役者の1人がCEO職を譲るのだ。

「ラストマン」となった東原社長。グローバルの競合に肩を並べることができるのか(撮影:尾形文繁)

さらに、中村CFOは「ラストマンは東原だ」と明言。ラストマンとは、日立では「最終的な責任を自分で取る覚悟を持って仕事をする人」という特別な意味を持つ。最後の意志決定は東原社長に任されたのだ。CEOの交代は、V字回復から日立が新たな局面に立ったことを意味している。

東原社長のCEOとしての船出は厳しい。同日発表された足元の業績がさえないからだ。2015年度は、売上高9兆9500億円(前期比1.8%増)、営業利益6300億円(同1.8%減)の増収減益となる見通し。増収の要因は、2015年2月に買収を決めたイタリアの鉄道会社アンサルドブレダとアンサルドSTSの売上1200億円分が上乗せされたことに過ぎない。また、営業利益は期初予想から500億円も下方修正した。

調整局面をどう脱却するのか

下方修正の主因は2つ。社会・産業システム部門で、資源価格の下落を受け、石油やガスのプラント受注が大幅に減少したこと。また、注力中の情報・通信システム部門において、北米でハイエンドストレージの需要減少があったためだ。加えて、景気低迷が続く中国の建設機械や自動車関連機器などのオートモーティブ部門の落ち込みも痛かった。

これらの状況を受け、案件減少により競争が激化している中東の石油などの産業プラント、海外の化学プラントから撤退を決めた。プラントは水処理や医薬分野など日立が得意とする分野に注力する。さらに、採算が悪化している通信関連は基地局なども撤退。規模を追わずに利益を重視し、次の成長に向け早急にメスを入れた。

6月には2018年度を最終年とした中期経営計画が示される。常々日立が意識する米GEや独シーメンスといったグローバル重電の仲間入りをすべく、10%(今期6.3%)の営業利益率を目指す数値が示されるだろう。達成のためにも、V字回復からの調整局面をどう乗り切るか、ラストマンと指名された東原社長の手腕が試される。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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