経済危機が拍車をかける負のグローバリゼーション--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授


 アイデアは、社会的グローバリゼーションの重要な側面である。技術進歩で物理的な移動は容易になったが、移民に対する住民の反応は、現在の経済危機が勃発する前から厳しくなってきている。現在の危険性は、経済危機に対する近視眼的かつ保護主義的な反発が世界経済の成長を促進し、何億人もの人を貧困から救い出した経済的グローバリゼーションを窒息させてしまう可能性があることだ。

また、簡単に海外に行ける状況に不況が重なったことで、移民率は社会的な摩擦が経済的な恩恵を上回る水準まで上昇するかもしれない。同様に、不況は国際関係だけでなく国内での対立を悪化させ、暴力を引き起こすかもしれない。

同時に国際的なテロリストは、インターネットなどの情報技術を利用し続けるだろう。経済活動の低迷は大気中の温室ガスの蓄積率を低下させるかもしれないが、同時に費用のかかる排出ガス対策の実施を遅らせることになるだろう。

政府が景気対策で協力し、保護主義に抵抗しなければ、現在の経済危機はグローバリゼーションを終わらせるだけでなく、善意の活動にもブレーキをかけ、世界は最悪な状況になるかもしれない。

Joseph S.Nye,Jr.
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。

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