経済危機が拍車をかける負のグローバリゼーション--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授
国際的な気候変動は、世界の至る所で人々の生活に影響を及ぼしている。多くの科学者は、地球温暖化は人間の活動が原因で起こっており、21世紀に地球の気温は華氏で2・5~3度上昇すると予想している。その結果、ある地域では洪水が起こり、別の地域では干ばつが起こるなど、気候変動は厳しくなるかもしれない。気温の上昇で温暖な季節が長くなり、氷河が溶け始めている。過去1世紀の海面の上昇スピードは、過去300年間の平均よりも10倍も速い。
経済以外の分野でも進むグローバリゼーション
さらに軍事的グローバリゼーションも進んでいる。経済的なグローバリゼーションは1914年に頂点に達したが、第1次世界大戦の勃発で後退した。国際的な経済統合が14年の水準に回復するまでに半世紀を要したが、軍事的グローバリゼーションは経済的グリーバリゼーションが後退した後も拡大を続けている。
冷戦中に米ソの国際的な戦略的相互依存性が高まり、再認識されるになった。冷戦は世界を二分する同盟を作り上げただけでなく、いずれかの側が30分以内に相手を破壊する大陸間弾道弾の使用を可能にした。
こうした事態が従来と異なるのは、それが新しい状況だからではなく、潜在的な軍事対立の規模とスピードが極めて大きいからである。現在、アルカイダなどの集団は国際的な活動ネットワークを構築し、“非対称的戦争”と呼ばれる状況を通して伝統的な国家防衛に対する考え方に挑戦している。
最後に人々や文化、イメージ、アイデアの広がりによる社会的グローバリゼーションがある。19世紀に約8000万人が新天地を求めて海を渡った。その数は20世紀の移民の数をはるかに上回っている。21世紀初のアメリカの人口の3200万人(全体の11・5%)は外国生まれである。さらに学生やビジネスマン、旅行者など約3000万人が毎年、アメリカに入国している。