経済危機が拍車をかける負のグローバリゼーション--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

今年、世界経済は戦後初めてマイナス成長に陥るだろう。経済学者の中には、現在の経済危機がグローバリゼーションの終焉の始まりになるのではないかと懸念している者もいる。経済情勢が一層厳しくなると、保護主義が台頭するのが常で、各国は非難合戦を展開し、自国の雇用を守ろうとするだろう。1930年代に、そうした“近隣窮乏化政策”が世界経済を一層悪化させた。政治指導者が保護主義に抵抗しなければ、歴史は繰り返されるかもしれない。

しかし、経済状況の厳しさが予想されるからといって、それが世界的な相互依存のネットワークの拡大を意味するグローバリゼーションの終焉を意味するわけではない。グローバリゼーションには、幾つかの次元がある。経済学者は、グローバリゼーションとは世界経済が一体化することだと説明しているが、それ以外のグローバリゼーションも日常生活に重大な影響を及ぼしている。

グローバリゼーションの最も古い形は、環境問題のグローバリゼーションである。世界で最初の天然痘の流行は紀元前1350年にエジプトで記録されている。天然痘は、紀元後49年に中国、700年にヨーロッパ、1520年にアメリカ、1789年にオーストラリアで流行している。黒死病はアジアで始まったが、14世紀にヨーロッパの人口の4分の1から3分の1が犠牲になった。

ヨーロッパ人は15世紀にアメリカ大陸に梅毒を持ち込み、原住民の95%の生命を奪った。1918年にインフルエンザの流行で約4000万の人々が死亡した。

73年以降、それまで知られなかった感染性の病気が発見されている。80年代に発見されたHIV(エイズウイルス)は20年間で2000万人の命を奪い、4000万人に感染している。外来種の動植物が新しい地域に持ち込まれることで在来種が絶滅し、毎年、数千億ドルの経済的損失をもたらす可能性がある。

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